TAIYO YUDEN

エネルギー供給の多様化に対応するポリアセンキャパシタの適用

電波新聞ハイテクノロジー 2010年8月19日

1. はじめに

電気化学キャパシタ(以後、キャパシタと呼ぶ)は、古くはその低温での動作性能から、低温環境下での電池代替デバイスとして用いられてきたが、近年では、環境負荷物質の低減、充放電サイクル寿命の長さ、急峻な充放電に耐える等の特性を活かした、新しい使われ方が提案されている。

太陽誘電では、30mF~200Fの容量を持つ種々のキャパシタをラインナップ(図1)しており、小容量タイプのキャパシタは、リアルタイムクロック (RTC) ICのバックアップ用途として、大容量タイプのキャパシタは2次電池代替用途として、さまざまなエネルギー要求に応えている。今回は、当社のポリアセン系半導体 (PAS) キャパシタ (30mF~50F) についての特徴について説明する。

2. 多様化するエネルギーデバイスへの要求

近年、小型電子機器におけるエネルギーデバイスへの要求は多様化している。従来、小型情報端末等のRTCやメモリ等のバックアップ用電源においては、コイン型のリチウム一次電池、リチウムイオン二次電池が主に使用されていたが、低環境負荷、製品組立時のハンダリフロー等への対応からキャパシタへの要求が高まり、現在ではRTCバックアップ用途に多く使用されている。また、リチウムイオン二次電池に代表される高エネルギー密度二次電池が、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器用電源として広く使用されている。携帯機器の昨今の伸びはこれらの二次電池の貢献が大きいが、これらの二次電池は充放電時の反応速度の問題から、エネルギー密度は大きいもののパワー密度の面で不利となる用途もある。

このようなパワー密度を重視する用途、例えばLEDフラッシュなどに、また、USB接続機器において、USBからの供給電力以上の瞬間的な消費電力に対応するために、低負荷時に充電し高負荷時に電力を供給する用途でも、キャパシタが用いられている。また、環境負荷低減の観点からも、重金属を含まないポリアセンキャパシタへの要求が高まっている。

3. ポリアセンキャパシタ

3-1. 角形・コイン型ポリアセンキャパシタ

角形・コイン型ポリアセンキャパシタの主な用途はモバイル機器(携帯電話等)に使用されているRTCバックアップである。このRTCバックアップ向けの要求は小型・薄型でリフローハンダ付けへの対応である。角形・コイン型ポリアセンキャパシタは、PAS電極の優れた耐熱性、高エネルギー密度を活かし、リフローハンダ付けが可能な小型・薄型キャパシタラインナップしている。

角形・コイン型ポリアセンキャパシタは以下の特徴を有している。

  1. 高容量

    フェノール樹脂を熱縮合して得られたポリアセン (PAS) を正負極に用いており、電解液中のイオンのPASへのドーピング、アンドーピングを利用して充放電を行うため、従来の電気二重層キャパシタに比べてエネルギー密度が高いのが特徴である。また、二次電池とは異なり酸化還元電位での充電電圧のしきい値がなく、最大電圧値(アイテムによって2.5~3.3V)以下ならば、任意の電圧で充放電が可能である(図2)

  2. 長いサイクル寿命

    充放電時の電極材料の構造変化が二次電池に比べて極めて小さいため、充放電サイクル寿命が長く、10万回の充放電試験後も容量を維持している。

  3. リフロー耐熱性

    熱的に安定なポリアセンを電極に使用し、無機材料セパレータ、パッケージの耐熱性を高め(角形はセラミック、コイン型は耐熱性の高いガスケットを用いる)、封止技術により、環境に優しい鉛フリーハンダリフローへの適用をも可能としている。

    現在、太陽誘電でラインナップしている角形・コイン型ポリアセンキャパシタでは、実装面積が小さく、鉛フリーはんだリフロー対応の角形、鉛フリーはんだリフロー対応のコイン型は、サイズ違いで、それぞれ低電圧タイプ (SR) と高電圧タイプ (HR) がある。この他にマニュアルハンダ付け対応のリチウムドープタイプ (L) があり、高電圧、高容量タイプとなっている。また、代表的品種のPAS414HRの充放電特性を図3に示した。

3-2. 円筒型・薄型ポリアセンキャパシタ

円筒型・薄型ポリアセンキャパシタは、コイン型と同様にフェノール樹脂を熱縮合して得られたポリアセン (PAS) を正負極に用いて、電極を薄化することにより、ポリアセンへの電解質イオンのドープ、脱ドープが容易に行われるため、高容量に加えて、内部抵抗が小さくできるのが特徴である。

図4は太陽誘電でライナップしている円筒型・薄型ポリアセンキャパシタの一例で、円筒型の低ESR (LR) と高容量タイプ (LA)、薄型 (CPX) の品種があり、LRでは低ESRが実現できている。図5にLRシリーズの大電流パルス放電時の放電曲線を示した。このように小型でありながら大電流放電時の電圧降下が少ないキャパシタが開発され、放電負荷変動用途への対応が可能なこと、緊急時のシステムバックアップ用に使用される等、小型キャパシタの用途が広がっている。

高容量タイプのLAシリーズにおいても高容量、低ESRが実現でき、図6に示すような放電特性、重負荷パルス特性から、高容量、高パワー密度を重視する用途(放電負荷変動対応用途やエネルギー回生時の充電負荷変動対応等)に適したキャパシタの提供が可能となるものである。さらに、LAシリーズにおいては、電解液組成と合わせてPAS電極を特殊処理することにより高電圧化の開発が行われ、3Vタイプもライナップしている。その他、小型携帯端末の二次電池補助用途(LEDフラッシュ等)や Solid State Drive (SSD) の電源バックアップ用途として、薄型もラインナップしている。

4.ポリアセンキャパシタの応用分野

ポリアセンキャパシタは、その特徴を活かし、これまでの小型電池代替用途だけでなく、モバイル機器における、急峻なエネルギー取り出し用途での展開が考えられる。応用分野としては以下の4点などが検討され、実用化が始まっている。

  1. RTCバックアップ等の電池代替電源
  2. SSD等のシステムバックアップ電源
  3. USB機器のピークアシスト
  4. LEDフラッシュ等の大電流アプリケーション

角形・コイン型ポリアセンキャパシタは、その構造上、鉛フリーはんだリフローに耐えることを特徴とし、比較的小容量かつESRが大きいため、低消費電力で緩やかな出力特性の要求に応えるキャパシタである。アプリケーションとしてはRTCバックアップ用の電源がある。

円筒型・薄型ポリアセンキャパシタは、低ESRであるため、急峻な出力特性の要求に応えるキャパシタである。アプリケーションとしては、充電と放電の間隔が短く、かつ急峻な大電流を要するLEDフラッシュ等の、主電源からのエネルギー供給をアシストする用途に向いている。

5.今後の展開

太陽誘電は、主力製品である積層セラミックコンデンサ事業において、さらなる小型・大容量化に主眼を置いて製品開発に取り組むとともに、2007年3月、エネルギーデバイス分野における新たな領域への参入をめざし、電気化学キャパシタの一種であるポリアセンキャパシタやリチウムイオンキャパシタの開発技術、製造技術を有する太陽誘電エナジーデバイスを連結子会社化した。太陽誘電が培ってきた各種要素技術と太陽誘電エナジーデバイスの有するポリアセンキャパシタ開発技術や製造技術との融合を図り、エネルギーデバイス市場のニーズに的確に応えたポリアセンキャパシタの開発を行うとともに、エネルギーデバイス分野における取り組みをより加速、強化し、多様化するエネルギー供給に、多彩な商品ラインナップで対応する。