TAIYO YUDEN

エネルギー供給の多様化に対応する、リチウムイオンキャパシタの適用

電波新聞ハイテクノロジー 2011年8月18日

1. はじめに

電気化学キャパシタ(以後、キャパシタと呼ぶ)は、古くはその低温での動作性能から低温環境下での電池代替デバイスとして用いられてきた。しかし近年では、環境負荷物質の低減、充放電サイクル寿命の長さ、急峻な充放電に耐える等の特性を活かした、新しい使われ方が提案されている。

太陽誘電では、30mF~200Fの、種々のキャパシタをラインナップ(図1)しており、小容量タイプのキャパシタはリアルタイムクロック(RTC)ICのバックアップやエナジーハーべスティングの用途として、大容量タイプのキャパシタは電池併用や代替の用途として、様々なエネルギー要求へ応えている。

今回の記事では、当社の250mF~200Fのリチウムイオンキャパシタ(以下LIC)の特徴について説明する。

2. 多様化するエネルギーデバイスへの要求

リチウムイオン二次電池(以下LIB)に代表される高エネルギー密度二次電池が、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器用電源として広く使用されている。近年、電子機器におけるエネルギーデバイスへの要求は多様化していて、二次電池の出力特性とサイクル寿命をキャパシタで補う用途が広がっている。また一次電池搭載機器においては、電池容量の有効利用の点からキャパシタを併用する用途が広がっている。

このような中で、バックアップやピークアシスト用に、エネルギー密度、サイクル寿命、安全性等の点から、電気二重層キャパシタ(以下EDLC)とLIBの特徴を併せ持つLICへの要求が高まっている。

3. リチウムイオンキャパシタ

LICは、EDLCとLIBの特徴を併せ持つハイブリッドキャパシタであり、その高エネルギー密度、信頼性、長寿命、安全性の利点から開発が活発化している。ここでは、LICの特徴・特性をEDLCと比較して紹介する。

3-1. LICの原理と特徴

LICとは、負極にリチウム(以下Li)ドープ可能な炭素系材料を用い、正極にはEDLCに用いられている活性炭、あるいはポリアセン系有機半導体などのキャパシタ材料を用いたハイブリッドキャパシタである。負極に電気的に接続された金属Liが、電解液の注液と同時に局部電池を形成し、負極の炭素系材料にLiイオンとしてドープがスタートする。ドープが完了すると負極の電位は概略Liの電位となるので、LICは充電前の初期電圧として3V弱の電圧を有する。

従って、図2に示すように、LICの充放電電位(VLIC)とEDLCとの充放電電位(VEDLC)を比較すると、正極の電位をあまり高く設定しなくとも、高電圧が得られ、このΔVmaxの差が結果的に信頼性向上の一因ともなっている。

3-2. LICの特性

太陽誘電のLICでは、最大充電電圧は3.8VとEDLCに比べて高く、また、容量も同サイズのEDLCに比べ約2倍高容量となっている。従って、エネルギー密度もQ=1/CV2から約4倍となっている。

  1. 放電レート特性

    図3に、200Fシリンダ型LICの放電特性とその温度特性を、100mA~10Aまでの広範囲な放電電流で示した。200Fシリンダ型LICは3.8V-2.2Vまでの容量は約100mAhであるので1C~100Cレートでの放電で良好な放電特性を有している。特に、100Cレートでの放電に於いても約60%の放電容量が得られている等、高出力放電特性に優れたキャパシタと言える。

    また、100Fシリンダ形LICの100mA放電(2Cレート)での温度特性を示した。ここに示すように、高温(60℃)においても安定な放電曲線が得られており、-20℃の低温に於いても60%以上の容量維持率を示し、また-30℃の極低温に於いても電解液中のイオンの移動度低下に伴う電圧降下はあるものの、約50%の容量維持率を示す等良好な温度特性を有している。

  2. 自己放電特性

    LICは予め負極にLiをドープさせ負極の電位を安定化させているため、優れた自己放電特性が代表的な特長の一つである。

    図4に40Fシリンダ型LICの25℃における3.8V-24時間充電後の自己放電特性と、ほぼ同容量のEDLCの自己放電特性を示した。ここに示すように、EDLCと比較して自己放電が小さく、LICでは25℃で100日経過後も3.7V以上の電圧を維持している。

  3. フロート充電特性

    図5に40Fシリンダ型LICと、ほぼ同容量のEDLCの60℃での各々の定各最大電圧でのフロート充電特性(連続充電)を示した。上で述べたように、LICは3.8Vの高電圧の充電に於いても、EDLCに比べ正極の電位は低く抑えることが出来るため、フロート充電での特性劣化が少なく信頼性が高いのが特長である。

    更に、充電電圧を3.5Vにディレイすれば、85℃の高温下でのフロート充電(連続充電)において、2,000時間経過後でも約90%の容量維持率が得られる。

  4. 充放電サイクル特性

    LICは正極には活性炭等のキャパシタ材料によるイオンの吸脱着反応を用いているため、LIBと異なり充放電サイクル中における正極の結晶変化が無く安定的である。

    また、負極では予めLiを炭素系材料にドープしてあり、かつ充放電における負極中のLiイオンの利用率を低く抑える設計が可能なため、EDLCと同等の10万回以上の優れた充放電サイクル特性を有している。

3-3. LICの安全性

LICは負極にLiイオンをドープした炭素材料を使用しているため、LIBと同様な安全性に関する懸念があると思われがちだが、LICとLIBでは正極材料が異なり、LIBでは金属酸化物が使用されているのに対し、LICでは活性炭などの酸素を含まない炭素系材料が使用されているため、LICとLIBの内部短絡時の挙動が異なる。

LICでは短絡後のセル内部の温度上昇による負極と電解液の反応によりセル内圧の上昇が起こるが、その後はLIBとの正極材料の違い(酸素を含まない)により熱暴走反応は起こらず、安全弁の開放で穏やかに終息する。

このように、LICは熱暴走による発火、破裂等の大事故には至らず、EDLCと同様の安全性が理論的に保たれているものである。実際の内部短絡を想定した200Fシリンダ型LICの釘刺し試験では、短絡後にセル外壁温度は100℃に達するがその後徐々に低下し、試験後のセルは大きな変形、破裂等も起こらず安全であることが確認されている。

表1にはシリンダ型LICの安全性試験結果のまとめを示した。これらの結果のように、LICは正極材料に金属酸化物を含まないため、セル内部で発熱が起こっても熱暴走のモードにならない。また、内部短絡が起こっても、負極の電位が銅の溶出電位を越えないため、負極基材の溶出による内部短絡が起こりにくい等の特長により、EDLCと同等に安全性の高い蓄電デバイスであると言える。

3-4. LICの応用分野

小型・中型LICは、その特長であるサイクル寿命によって環境負荷低減への貢献が期待できるデバイスと考えられる。また、薄型は非接触充電等の急速簡易充電システムとの組み合わせ及び自然エネルギー充電による小型モバイル機器、通信機器等への展開が考えられる。

応用分野としては

  1. 急速充電、軽量、低自己放電の特長を活かした民生機器用電源

    例: USB端子から約1分間充電するだけで、約1.5時間のプレゼンテーションでの使用(約30分の連続発光)を可能とするレーザーポインター(図6:CEATEC JAPAN 2010、当社ブースにて展示)

  2. 通信機能付きスマートメータ&検針システム
  3. 太陽電池、風力発電、燃料電池等と組み合わせた蓄電デバイス

    道路鋲、自発光標識、街路灯、小型LED照明、センサーネットワークモジュール等

  4. 省エネ機器の補助電源

    コピー機の急速ドラムヒーティング、プロジェクター等

  5. 自動車電子制御関連

    アイドリングストップ、ドライブレコーダ、ブレーキ by Wire等

等に検討され、一部実用化が始まっている。

4.まとめ

シリンダ型・薄型LICは、自己放電が小さく、大容量かつ低ESRであるため、充放電が過酷な電池の代替要求に応えるキャパシタである。アプリケーションとしては、充電と放電の間隔が比較的長く、大容量であることが要求される太陽電池応用機器、エネルギー回生、セット商品の待機電力を低減する等の用途に適している。太陽誘電では、多様化するエネルギー供給に、多彩な商品ラインナップで対応していく。