社長インタビュー

  • Q1.これまでの成長戦略と体質改善の取り組みを踏まえ、今後の基本戦略と中期目標について説明してください。

    A1.5つの基盤強化と3つの施策への取り組みにより、売上高3,000億円超、営業利益過去最高、ROE10%以上を目指します。

    これまで取り組んできた、市場・商品・顧客・財務の4つの基盤強化には今後も継続して取り組んでいきます。「市場基盤」については変動の激しい民生・情報・通信市場への偏重を改め、スマートフォンなどの成長機器だけでなく、自動車や産業機器などの新分野にも狙いを定めて市場開拓を進めます。

    「商品基盤」については、デバイスの進化にマッチしたスーパーハイエンド商品をいち早く投入するとともに、車載電子機器向け高信頼性商品の供給体制を整備していきます。「顧客基盤」については、主要顧客から戦略パートナーとして選ばれるポジション獲得に努めます。「財務基盤」に関しては、成長投資を積極化しつつ、引き続きネットキャッシュプラスに向けた改善を推進していきます。

    ※ ネットキャッシュ=現預金-有利子負債

  • さらに、拡販に向けたマーケットイン活動を強化するため技術営業職「FAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)」を120名から180名に大幅増員するとともに、新たに5つ目の基盤強化として「人材」を加え、グローバル人事戦略を推進します。

    そして、「スーパーハイエンド商品の売上高比率50%超」と「注力すべき市場向けの売上高比率30%超」を達成し、中期目標である売上高3,000億円超、営業利益過去最高、ROE10%以上を実現するために引き続き邁進します。

    ※ 過去最高益353億円(2001年3月期)

    中期目標に向けての基本戦略:5つの基盤、3つの施策、達成水準

  • Q2.3年間で1,000億円の設備投資を計画していますが、今後どの分野で成長を目指していきますか。

    A2.高機能スマートフォンと車載電子機器向け市場に、大きなビジネスチャンスがあると考えています。

    2015年のスマートフォンの世界販売台数は2桁成長が見込まれています。この勢いがいつまでも継続するとは考えられませんが、LTE対応の高機能モデルにフォーカスすれば2014年から2017年にかけて2.5倍に拡大する見通しです。同時に端末開発では、通信量の増大を背景に高周波化や周波数帯の狭隣接化への対応がますます重要となり、当社のFBAR/SAWフィルタの需要を喚起すると考えています。また、CPUの高性能化・薄型化・省電力化は、超小型・薄型・大容量積層セラミックコンデンサ(MLCC)や小型大電流インダクタの需要拡大につながっています。

    ※ FBAR/SAWフィルタ:モバイル通信端末において、必要な周波数帯域の電気信号を区別して通過させる機能を持つフィルタです。FBARフィルタはSAWフィルタよりも高い周波数帯域で特性を発揮します。

    太陽誘電の事業を取り巻く2大潮流(1.スマートフォン)

  • 一方、車載電子機器市場に対しては、高品質はもとより、高温度対応や長寿命への要求を満たす高信頼性商品のラインアップを充実させてきました。すでにTier1(1次サプライヤー)の自動車電装メーカーから認定を受けるなど、ビジネス拡大に向けた活動が加速しています。自動車出荷台数の伸び率は4~5%となっていますが、車載回路電子化のさらなる加速や電気自動車・燃料電池車へのシフトに伴い、2020年の車載電子機器市場は30兆円(2012年比1.7倍)に達する見通しです。

    このように当面はスマートフォンと車載電子機器の2大潮流を飛躍の足掛かりと捉え、一定の投資回収基準を設けて、スーパーハイエンド商品の供給能力を高め、収益の最大化を目指します。

    太陽誘電の事業を取り巻く2大潮流(2.車載電子機器)

  • Q3.各商品の戦略について詳しく説明してください。

    A3.最先端技術で市場要求に応え、MLCC、インダクタ、通信デバイスを中心としたスーパーハイエンド商品のさらなる拡販を目指します。

    当社の商品戦略は、技術トレンドの先を見据え顧客ニーズにマッチした商品を提供することを基本としています。これを踏まえ、MLCC、メタル系パワーインダクタ「MCOIL™(エムコイル)」、通信デバイス(FBAR/SAW)の商品戦略を説明します。

    MLCCは小型、薄型、大容量が技術トレンドとなっており、すでに量産を開始している世界最小0201サイズ(0.25mm×0.125mm)や、世界最薄90μmといった薄型商品の新規投入に注力します。大容量対応では、4532サイズ(4.5mm×3.2mm)で世界最大容量470μFの商品を量産しており、さらに2016年には1000μFを実現させ、電解コンデンサからの置き換えを進めていきたいと考えています。

    社長近影

  • 「MCOIL™」は、世界トップクラスの材料技術や巻線/積層プロセス技術をベースに、標準タイプから、大電流、小型薄型、ハイスペック、コストパフォーマンスを重視するタイプまでを取り揃え、全方位のラインアップを拡充します。加えて、車載電子機器市場向けに高温度対応大型パワーインダクタ等の供給体制も整えます。

    通信デバイスは、FBARフィルタとSAWフィルタの両方を開発・生産している強みを活かし、高周波化や周波数帯の狭隣接化への対応と小型化によって差別化を図ります。

    一方、注力すべき市場への展開としては、電動アシスト自転車等に使用するエネルギー回生システムや、産業用太陽光発電所向けワイヤレス監視システムを商品化し、採用が始まっています。

    スーパーハイエンド化の加速

  • Q4.今後の成長投資の計画について、その内容を詳しく教えてください。

    A4.スーパーハイエンド商品と車載・産業機器市場向けの高信頼性商品に重点を置いた積極投資へと転換し、研究開発投資も増額します。

    当社は2015年3月期までの3年間、設備投資を減価償却内に抑制していましたが、今後3年間では1,000億円を計画しており、2016年3月期はそのうち400億円を予定しています。これは、2015年3月期に比べ2倍強の水準にあたり、スーパーハイエンド商品と車載・産業機器市場向けの高信頼性商品に重点を置いた投資を実施する方針です。

    需要拡大の続く超小型・大容量MLCCについては、生産ラインの増設および最新設備への入れ替え等を行い、生産能力と生産性向上を図ります。2016年3月期のMLCCの生産能力は10%程度の伸びを見込んでいます。さらに、新潟太陽誘電株式会社に新棟の竣工を予定しており、2016年3月の稼働を目指しています。

    今後の成長を支える設備投資等の計画

  • インダクタは、国内外の工場で「MCOIL™」や高周波積層チップインダクタの能力を増強し、供給体制をさらに強化します。「MCOIL™」については需要に応じて月産4億個体制から50%増の月産6億個体制への能力増強を計画しています。

    通信デバイス(FBAR/SAWフィルタ)については、子会社の太陽誘電モバイルテクノロジー株式会社(青梅)を開発・生産の主要拠点として機能再編を進めています。同社所沢工場(埼玉)とあわせて効率的な事業運営を行い、増産体制を構築していきます。特に需要が拡大しているFBARフィルタについては、前期比倍増の増強をしていきます。

    これら投資の実行にあたっては、将来の需要動向を明確にし、投資回収が早期に達成可能であるかの慎重な判断をしたうえで実施していきます。また、生命線である新技術、新商品の開発を加速するため、研究開発費も9%増額し90億円を予定しています。

    研究開発費の計画

  • Q5.中期的な目標、実行計画を踏まえて、2016年3月期の業績見通しと株主還元について教えてください。

    社長近影

    A5.スーパーハイエンド商品のプロダクトミックスをさらに高めることで収益性を一層改善させ、配当金の増額による株主還元を実施したいと考えています。

    2016年3月期の期初計画では、期中平均為替レート1米ドル118円を前提に、売上高2,440億円(前期比7.4%増)、営業利益190億円(同44.5%増)、親会社株式に帰属する当期純利益120億円(同9.9%増)を目指しています。設備投資の大幅増加に伴い減価償却費が増加しますが、スーパーハイエンド商品の採用がさらに進むと想定しており、販売数量増やプロダクトミックス効果と原価低減により、営業利益拡大を見込んでいます。

  • このような業績見通しの中、経営の最重要課題の一つとして株主の皆様への利益還元についても充実させたいと考えています。株主の皆様への利益還元の一つである配当については、これまでは、安定的かつ持続的な収益体質の構築、ならびに財務体質の改善を優先し、増益ながら2015年3月期の配当も1株当たり年間10円に据え置きました。しかし、2016年3月期は、必要な成長投資を行いながら、同時にネットキャッシュプラスに向けた財務基盤強化を図って総還元性向30%の目標実現に向けて配当金額を引き上げるタイミングであると判断し、年間配当金15円(中間配当金5円、期末配当金10円)を計画しています。

    配当金の推移

本ホームページ上には、将来の業績に関する記述が含まれています。こうした記述は、将来の業績を保証するものではなく、 リスクや不確実性を内包するものです。
将来の業績は、経営環境の変化などにより、実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。