特集: IoT時代到来に向けた生産革新「smart.E」プロジェクト

ビッグデータ活用で
ものづくり力を強化
				IoT時代の本格的到来によって、太陽誘電が生産する電子部品の需要は爆発的な伸長が予測されています。太陽誘電は、桁違いのニーズ増大に対応するために、継続的な設備投資による能力増強と並行し、ロスを削減しつつ生産量を桁違いに増やすための生産革新活動「smart.E」プロジェクトを推進しています。
smart.E プロジェクト統括責任者
常務執行役員
電子部品事業本部 本部長
佐瀬 克也

IoT時代における電子部品需要の急拡大

身の回りのあらゆる「モノ」がインターネットにつながるIoTが進展しています。これまでインターネットにつながっていなかったものに通信機能を付加すれば、必然的に使われる電子部品の数や種類が増えます。2010年には130億個ほどだったインターネットデバイスは、2040年には10兆個にもなるといわれており、これに伴い電子部品の需要も爆発的に高まることが予想されています。

このような環境の変化は、さまざまなデバイスに使用される電子部品を供給する当社にとってビジネスチャンスであると同時に、その数量増に見合った効率的な生産体制が構築できない場合、競争に取り残されるリスクにもなりえます。そこで当社は新たな生産革新活動smart.Eプロジェクトを進めています。

生産革新プロジェクトの進化
					2010年に130億個のデバイスが2040年には10兆個になると推測される。
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smart.Eプロジェクト以前の取り組み

これまで当社は「Gシステム」と名付けた生産管理システムを導入して生産工程の稼働状況を管理していました。

個々の生産設備をモニタリングし、運転・停止状況、異常の有無、生産数などを、リアルタイムに把握するものです。1996年に一部工場で運用開始して以後、海外拠点を含むほぼすべての積層セラミックコンデンサ生産工程に導入し、見える化を進めてきました。

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Gシステムからsmart.Eへ進化

Gシステムが設備単体での稼働率向上に取り組んだのに対して、新たに生産システム全体を連結して、俯瞰した視点から生産性向上に取り組んでいくのが、smart.Eプロジェクトです。smart.Eプロジェクトが目指すのは、不良率の大幅な低減、生産性向上による収益性の向上です。

この目標達成に向けて、生産設備の見える化と人の見える化という二つのアプローチで生産性を向上させ、さらにそれらを融合することによって成果の最大化を目指しています。

設備に関しては、良品率低下や稼働停止を発生させるような異常に対して、「見える化」「早期発見」「未然防止」の3つのステップで、効率的に設備を動かす仕組みを構築していく計画です。初年度となる2017年3月期は、異常の「見える化」を中心に取り組みました。具体的には、各生産システムの情報を一か所に集めて全工程の情報をひもづけ、各工程で収集したデータを解析することでばらつきを抽出し、原因となる課題の明確化によってばらつき抑制を図るサイクルを進めました。

同時に、人の見える化にも着手しています。こちらは、設備を操作する人のばらつきに着目して、不良発生や作業効率悪化はどのようなケースで発生し、どのようなやり方をすれば効率が上がるのか、これらの要因の分析による作業改善や作業負荷軽減への落とし込みを進めています。設備のばらつきが、そこで使われている部品の寿命、摩耗、歪みなど比較的予測可能な要因によるものである一方、人のばらつきは個人個人のスキルや経験値に加えて、体調や周囲の状況など不確定な要因によることもあり、完全に均一化することはできません。人のばらつきに左右される部分を最小化するために、人の負荷そのものを減らす仕組みを導入し、生産性の向上に取り組んでいきます。

生産革新プロジェクトの進化
					Gシステム、smart.E
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今後の取り組み
―データを分析するサイエンティストを育成―

プロジェクト2年目となる2018年3月期は、データを解析しながら、生産効率改善につながる分析に取り組み始めています。中でも設備に関する取り組みでは、生産工程や商品における異常と正常を定義し、異常を早期発見して生産工程にフィードバックする仕組みの構築を進めています。その際に必要なのが、収集した膨大なビッグデータを解析して課題を明確化し、意味のある提案につなげることのできる人材、しかもそれを迅速にこなすことができる人材です。人材育成はsmart.Eプロジェクトの成果を左右する重要テーマの一つであり、統計知識の習得や解析技術のスキルアップなどを推進し、データサイエンティストを育成しています。データ解析の手法を確立し、成功事例を積み重ね、国内・海外の生産拠点へ全面展開していきます。

人によるばらつきの見える化
					作業者Aを基準にして作業を標準化→作業標準化への取り組みを続けた結果、作業時間のばらつきが抑制され良品率も改善
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smart.Eが生み出す成果

IoT時代到来は電子部品の爆発的な需要増加につながることから、当社にとってビジネスチャンスです。一方で、太陽誘電グループが本格参入を目指す自動車などの高信頼性市場においては品質への要求レベルがますます高度化するなど、生産量の拡大と安定した品質を両立させることが重要な経営課題となりつつあります。しかし、電子部品の需要増に対応するために人員や設備をむやみに増強しては、コストが際限なく増えてしまいます。

急速に発展するIoT社会を支える電子部品メーカーの一社として、われわれが果たすべき役割は非常に重要であると認識し、能力増強と並行してsmart.Eによって生産工程におけるムダ・ムラ・ムリをなくしてロスを削減し、桁違いの生産量にも対応できる生産体制を構築していきます。

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