社長メッセージ

販路を拡大し、ものづくり力を大きく進化させることで飛躍への備えを進めてまいります。

平素は株主・投資家の皆様、お取引先、地域社会の方々をはじめとするステークホルダーの皆様に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

2017年3月期の業績は、連結売上高2,307億円(前期比4.0%減)、営業利益123億円(前期比47.0%減)となりました。また、海外子会社の構造改革に伴う事業構造改善費用などを計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は54億円(前期比63.2%減)となりました。

しかしながら、将来的に安定需要が見込める市場として自動車や産業機器向けの販路開拓に注力し、高信頼性商品の売上を着実に積み上げています。また、スマートフォン向けでは、通信方式の変化や多バンド化などの高性能化により、モバイル通信用デバイス(FBAR/SAW)の売上を拡大させることができました。円高が進行したことにより5期連続の増収増益とはなりませんでしたが、電子部品の成長トレンドに変化はありません。

足元の事業環境も、スマートフォンの次世代モデルに対する期待の高まりや、IoT(モノのインターネット)の進展を背景に、競争優位性の高い最先端商品の需要は旺盛です。自動車や産業機器向け商品もさらなる伸長が見込まれます。

こうしたなか、生産能力増強に加え、ものづくり力を大きく進化させることで生産効率の一層の向上を図り、飛躍への備えを進めてまいります。

ステークホルダーの皆様には、変わらぬご支援・ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

代表取締役社長登坂 正一

社長インタビュー

Q. 今後の事業環境見通しと持続的な成長に向けた取り組みについてお聞かせください。
			A.電子部品の爆発的な需要増が予測されるなか、「注力すべき市場の拡大」と「ものづくりの進化」を重点課題とし、さらに「新事業の創出」を推進します。

スマートフォンの高機能・高性能化が続き、電子部品の1台当たり搭載数は右肩上がりを続けています。また、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTが、さまざまな分野で広まり始めています。自動車業界では、電気自動車の開発に加え、自動運転システムの実用化も進められており、電子化に必要な電子部品の数は大きく増加しています。これらを背景として、電子部品の需要は2020年を境に爆発的に増えると予測しています。

当社は、コンデンサ、インダクタ、通信デバイスという3つの『モノ』を提供しています。製造業の付加価値構造を示すスマイルカーブ(下図)に当てはめると、その左側にあたります。スマートフォン向けを中心とする、成長性が期待できる当社の中核事業であり、引き続き最先端商品を展開していきます。同時に、「注力すべき市場の拡大」、すなわち自動車・産業機器といった安定収益基盤の拡充に力を入れています。加えて、さらなるコストダウンと今後起きるであろう電子部品への桁違いの需要増に対応するため、ものづくり力を大きく進化させる「smart.E」プロジェクトを進めています。

一方、スマイルカーブの右側では、単なるモジュールの提供ではなく、ソリューション提供(=『コト』の提供)に軸足を置いた「新事業の創出」を推進しています。

当社はこうした取り組みにより、中期目標として売上高3,000億円、営業利益率10%以上、ROE10%以上を目指しています。

高収益体質に向けたビジネスモデルの変革
					コア技術の強化(材料、プロセス、設計)、モノづくりの進化、コンデンサ、インダクタ、通信デバイス
					ソリューション提案による新事業創出、新事業・回路モジュール
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Q.重点課題への取り組みはどのように進展していますか。
			A.注力すべき市場での売上は着実に伸びています。「ものづくりの進化」では、設備と人の見える化により大幅に生産性を向上させるプロジェクトを進めています。

1つ目の重要課題である「注力すべき市場の拡大」は、将来的に安定的かつ高い需要が見込める自動車・産業機器等の売上構成比を現在の24%から38%まで引き上げることを目指しています。特に自動車向けの売上は、品揃えの充実と安定供給体制の整備により、ここ5年間の年平均成長率は34%となりました。当社では、自動車向けの電子部品市場が、2015年の19兆円規模から2025年には32兆円規模に急拡大すると推測しています。自動車向けでは、引き続き市場成長率を上回るペースで売上を伸ばすことで、売上構成比を現在の6%から中期的に15%まで高めたいと考えています。

2つ目の「ものづくりの進化」については、smart.Eプロジェクトに取り組んでいます。当社は生産設備の稼働状況をリアルタイムにデータ化し、共有できるシステムを16年前に導入したことで、“生産設備の見える化”を図ってきました。smart.Eプロジェクトではその範囲を広げるとともに人の見える化を進め、設備と人をシンクロさせて革新的に生産性を高めることを目指しています。「ムダ・ムラ・ムリ」を極限までなくす新たな段階にジャンプアップするということです。

これまでは、生産現場で個々に最適化されたシステムを作って後から統合するというところがありました。しかし、そういった個人技をつなぎ合わせるやり方では、売上3,000億円を超える世界には行けません。電子化の進展による爆発的な需要が来る前に、ものづくり力を大きく進化させていきたいと考えています。

「smart.E」プロジェクト モノづくりの進化
					IoTとビッグデータを駆使してムダ・ムラ・ムリをなくし、モノづくりを大きく進化させる
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Q.「新事業の創出」の進捗状況と有望なプロジェクトについて教えてください。
			A.センシングデバイス、エネルギーシステム、光無線通信システムなど、さまざまなプロジェクトが進行し、成果を上げ始めています。

社長写真

コンデンサ、インダクタ、通信デバイスを中心に『モノ』を提供する中核事業に対し、新事業では『コト』の創出と提供に取り組んでおり、お客様に高付加価値のソリューションをご提案することに軸足を置いています。例えばセンシングデバイスでは、何をどのように感知し、どのような通信手段で、どのように情報を処理するのか、その後の効果検証等のアフターサービスも含めてトータルにソリューションを提供するビジネスの創出を目指しています。

実際、成果も現れ始めています。これまで新事業として取り組んでいた電動アシスト自転車向けエネルギー回生システムは、ビジネスモデル確立と売上規模拡大に伴い、事業化することができました。進行中のプロジェクトの一例としては、次世代通信技術の一つである「光無線通信システム」があります。セキュリティ管理の高度化を背景に需要が拡大している監視カメラ向けで、従来は実現が難しかった場所への設置やより安全性の高い無線ネットワーク構築、水中通信など、多用途にソリューションを提供できます。また、複数のガスを識別できる「においセンサ」は早期事業化に向け、小型・高感度化に取り組んでいます。さらに、何かに触れている感覚をタッチパネル上で疑似的に伝える「触覚技術」は、さまざまな用途で有望と見ています。

当社の『モノ』ビジネスとは、自社の技術やノウハウを高度化し、既存分野のお客様とのビジネスを拡げていくものでした。新事業推進にあたっては、異業種を中心とする新規のお客様へのアプローチも強化し、これまでにないビジネスの形をつくりあげたいと考えています。他社との協業・アライアンスも積極的に検討し、新事業の創出を加速させていきます。

新事業の創出
					『コト』の提供、センシングから通信・クラウドまで
					他社との協業、アライアンスを活用し、事業化と拡大を加速
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Q.商品戦略としてはどのような取り組みを行っていますか。
			A.多様なニーズに応えて商品ラインアップを強化し、販売先を拡げています。

社長写真

お客様の求める機能や品質に応じた商品戦略を展開しています。

コンデンサは、超小型・超薄型・大容量を求めるスマートフォン市場や、高信頼性(高温、高電圧、振動等への耐久性)・大容量を求める自動車・産業機器市場に力を入れています。当社が業界をリードし続けている大容量化では、世界初となる静電容量1,000μFの積層セラミックコンデンサ(MLCC)の量産を2018年3月期中に開始する予定です。1,000μFの容量があれば、電解コンデンサから周波数特性に優れ信頼性で勝るMLCCへの置き換えが一層進むものと見込まれます。

インダクタは、より大電流への対応が求められていますが、当社ではそれに加えて高信頼性商品のラインアップを拡充し、自動車向けへの販路拡大に取り組んでいます。2017年3月期には、150℃の高温と30Gの振動に耐えるインダクタを商品化しました。高温で振動の激しいエンジンルームに装備される電子ユニットに使用できる商品で、車載用電子部品のグローバルな信頼性試験規格「AEC-Q200」に対応しています。インダクタも着実に自動車向けの品揃えを充実させ、商品供給拡大を目指します。

通信デバイスは、SAW、FBAR、積層セラミックという3つのフィルタの開発・生産技術をもち、高周波化、多バンド化などの通信機能の高度化に幅広くワンストップで対応できる強みを生かしています。特に今後数年の間に商用化が予定されている5G(第5世代移動通信システム)に向け、これら3つの複合技術でオンリーワン商品の開発に力を入れていきます。

コンデンサ事業の方向性
					高信頼性、超小型超薄型、小型大容量、大容量
					通信デバイス事業の方向性
					広帯域化、多バンド化MIMO化、高周波化
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Q.2018年3月期の業績見通しと投資計画および株主還元について教えてください。
			A.成長に向けた投資を継続し、過去最高の売上高と増益を目指します。株主還元は、総還元性向30%を中期目標として充実させていく方針です。

2018年3月期は、高機能・高性能化が進むスマートフォンなど通信機器向けの最先端商品、そして電子化が進む自動車・産業機器向けの高信頼性商品をともに拡大する見通しです。連結売上高は2,420億円(前期比4.9%増)の過去最高を見込んでいます。また、高付加価値商品の拡大や原価低減の推進により、営業利益は150億円(同21.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は90億円(同65.8%増)を想定しています。

設備投資は、270億円を計画しています。前々期、前期と合わせると3年間で1,000億円規模の投資となり、来期以降も同様のペースで投資を継続する予定です。また、研究開発費は、技術革新や新事業への対応を加速するため、前期比10億円増の110億円を予定しています。

株主還元につきましては、安定的かつ持続的な収益体質の構築、ならびにネットキャッシュプラスなどの財務体質改善を図りつつ、自己株式の取得等を含めた総還元性向30%を中期目標として充実させていく方針です。2018年3月期は、安定配当という観点から年20円(配当性向26.2%)の継続を計画しています。

 2018(計画) 設備投資額 270億円、減価償却費270億円、研究開発費110億円
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本ホームページ上には、将来の業績に関する記述が含まれています。こうした記述は、将来の業績を保証するものではなく、 リスクや不確実性を内包するものです。
将来の業績は、経営環境の変化などにより、実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。