特集: 物流変革が競争優位をもたらす

―自社倉庫管理システムの構築により自ら物流品質をコントロール―
				太陽誘電は生産プロセスのみならず、物流も当社バリューチェーンのコア業務と位置付け、
外部に委託していた倉庫管理を自社開発のシステムに切り替えて、お客様のニーズに応え
る高品質・高効率な物流体制の構築に向けた変革を進めています。
上席執行役員
グローバルSCMセンター担当
大嶋 一幸

物流業務アウトソーシングの課題

ブラックボックス化による弊害

1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、多くの企業が経営資源をコア業務に集中させるとともにコスト削減を図るためバリューチェーンの見直しを進めてきました。その際、製造業にとってのコア業務は、ものづくりに直接関わる調達・開発・生産プロセスであるとされ、物流業務はノンコアであるという認識から、専門業者である3PL(サードパーティロジスティックス)に委託する動きが顕著となり、電子部品業界においても例外ではありませんでした。

その結果、3PLに委託した物流業務はブラックボックス化し、メーカーには物流プロセスの妥当性を検証するノウハウが蓄積されず、物流品質を評価する能力さえも低下する状況が生じています。その一方で、エレクトロニクス業界では短納期化、JIT(Just In Time)、VMI(Vendor-Managed Inventory)等、お客様の需要変動に伴い必要なものを必要なタイミングで必要な量を納入するための物流対応の高度化が求められています。

また、一般的に電子部品の物流は、B to C取引とは異なり、自社工場出荷時に貼付されたJANコード(EANコード)のような統一コードで在庫管理から受発注に至るまで一元管理できず、個々のお客様の要望に応じてさまざまな物流加工が必要となります(下図)。例えば生産工場から製品を受け入れた倉庫では、お客様の指定に基づいてラベルの貼付などの物流加工を行っています。こうした物流加工のために倉庫での作業が複雑化したり作業工数が増加したりするなど、品質・コスト両面での課題となっていました。

物流の違い(B to Cの場合/B to Bの場合)
					B to C (最初から最後まで同じコードで流通)。
					B to B (自社コード、3PLコード、お客様コードが乱立 → ラベル貼付等の物流加工が発生)。
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自社倉庫管理システム開発による物流変革

自社で物流品質をコントロール

物流業務の外部委託によるこうした課題を解決するため、まずは生産工場からの出荷、倉庫でのオペレーション、そしてお客様への納品までの全物流プロセスの情報を把握するところから取り組みを開始しました。そして一連の流れを整理したうえで、従来3PLに委託していた倉庫管理を自社で行うシステムの開発に着手。3PLには倉庫スペースの提供と倉庫作業のみを委託する形で、2014年からシステム導入を開始しました。

今回当社で開発した自社倉庫管理システムは、上流の生産工場においてIDを印字したバーコードラベルを貼付し、生産から販売までこのIDによる一貫した管理を行うというものです。生産から販売までを自社で手掛ける太陽誘電グループのバリューチェーンを活かした、当社グループに最適なシステムといえます。

具体的には個々のリール(部品の最小梱包形態)、リールを収めた内箱、内箱をまとめた外箱すべてにIDを付加します。これにより、倉庫では外箱に貼付されているIDをバーコードリーダーで読み取るだけで、外箱を開けなくても、外箱内に梱包されている製品の詳細情報がシステム上で把握できるようになりました。その結果、出荷作業における物流加工の要不要をシステムで判別することができるようになり、外箱のまま出荷できるものは外箱のまま出荷、内箱単位で出荷できるものは内箱で出荷することで、作業効率改善を実現しました。また、リール単位で作業が必要なものについては、システムが作業内容の指示を出すので、作業者の判断ミスが排除され、物流品質を確保することが可能となります。

自社システムの優位性
					最適な物流体制の構築、改善→
自社システムにより物流機能の見える化・見せる化→
物流ノウハウの獲得・蓄積→
物流機能の再評価→

自社倉庫管理システムの展開
[導入済み]韓国、香港、シンガポール。[計画中]日本、上海、台湾、アメリカ
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物流変革で期待される効果

物流品質の向上・コスト削減・BCP体制の強化

この自社倉庫管理システムの導入には主に、①物流品質の向上、②コスト削減、③BCP対応の3つでメリットがあります。

物流品質の向上については、前述の通りIDを用いたバーコード管理でシステムが情報を読み取り判断する仕組みに切り替え、ラベルの貼付作業等における人の判断・目視確認などを排除することで、人為的なミスが無くなるというメリットが挙げられます。これに加え、これまで倉庫ごとに個別の仕様で管理されていた倉庫管理システム・倉庫作業が標準化されることで、1拠点で改善した施策を全拠点へ水平展開することが可能となります。

作業コストについても、外箱・内箱のまま作業することが可能となったことで作業効率が格段に高まり、これまで3PLに委託していた際のコストと比較すると、大幅に削減されます。また、従来は倉庫管理システムも含めた倉庫作業を3PLに委託していたため、業者選択の幅が限られていましたが、自社で開発した倉庫管理システムを業者に提供することで幅広い業者への入札を実施することが可能になりました。その結果、競争原理が働き、品質、コスト両面で当社に最適な委託先を選定することができるようになっています。

BCP対応については、全社的に共通のシステムを展開することで、一つの物流拠点が不測の事態にみまわれても、他の拠点を活用して迅速に対応することができます。

このように自社倉庫管理システム導入のメリットは非常に大きく、特にお客様への対応を向上させることができます。当社では自社の競争力向上に向けてこのシステムを積極的に展開していきたいと考えています。すでに韓国、シンガポール、香港の販売拠点で導入していますが、3年後までに導入ターゲットである7拠点すべてに展開する計画で取り組みを進めてまいります。

BCP対応の違い
					導入前:同じ3PLシステムでも個別仕様であり、対応に時間が掛かる。システムが違うため同じ仕様で作業できない。
					導入後:共通システムなので、どの拠点でもお客様の要求を満たした形で対応可能。
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