特集
〈 太陽誘電の価値創造 〉
材料技術、積層技術を中心とした
商品展開

太陽誘電は、創業時よりコンデンサを主力商品として開発、製造に取り組む中で、さまざまな技術を培ってきました。これらの技術は太陽誘電の他の商品や新たな領域にも活用されており、太陽誘電グループの成長を支えるキーテクノロジーとなっています。
太陽誘電のコア技術
太陽誘電は、これまでさまざまな商品を開発する中で、多くの重要なコア技術を培ってきました。これらの技術を最適に組み合わせることで、お客様のニーズに応える商品を提供し続けています。特に積層セラミックコンデンサ(MLCC)については、その特性を大きく左右するのが材料の性能です。このため太陽誘電では、材料開発から生産までを一貫して自社で行う生産体制を構築することで、競争優位性を確保しています。最先端商品を開発し続けるためには、ベースとなるセラミック材料の特性が優れていることが不可欠であり、原材料の合成や粒子制御といったさまざまな技術が駆使されています。
また材料開発だけでなく、製造プロセスの各段階における多様な技術についても、さらなる高度化を目指しています。積層技術をはじめとするプロセス技術は商品の性能を決定する重要な技術であり、研究開発における大きなテーマとなっています。

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材料技術
粉体表面コーティング/界面制御技術/セラミック材料技術(誘電体、磁性体、圧電体、絶縁体)/有機材料/電極材料/金属磁性材料/電気化学材料/イオン伝導体
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生産システム技術
高速高精度搬送・部品供給技術/制御技術/画像処理技術/組立加工技術/生産合理化技術/保守管理技術
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プロセス技術
粉体ハンドリング技術/薄膜技術/シート薄層化技術/印刷技術/積層技術/成形加工技術/焼成技術
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評価技術
測定評価技術(材料、プロセス、製品、設備、品質、信頼性)/分析技術/EMC技術/シミュレーション技術(物性、電気特性、機械特性)/品質・信頼性管理技術/安全規格技術
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実装技術
基板技術(ファインパターン、高精度トリミング)/部品実装技術(FCB、ワイヤーボンド…)/外部端子形成技術/洗浄技術/樹脂技術/外装技術
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設計技術
材料設計技術/部品設計技術/回路設計技術(電源・高周波)/構造設計技術/機械設備設計技術/品質・信頼性管理技術/安全規格技術
MLCCの構造
MLCCは、セラミック誘電体層(以下:誘電体層)と電極層が交互に積み重なった積層構造をしています。MLCCが電気を蓄える性能は内部電極の表面積で決まるため、小型でたくさんの電気を蓄えるためには、なるべく薄い層を形成し、それをより多く積み重ねる(積層する)ことが必要です。

高品質なMLCCを生み出す太陽誘電の材料技術・積層技術
MLCCの誘電体材料であるチタン酸バリウムは、酸化チタンと炭酸バリウムを合成してつくられます。太陽誘電では、商品の特性に合わせた最適なチタン酸バリウムを自社で合成する技術をもっています。

チタン酸バリウムのコアシェル構造
狙った特性を実現するためには、チタン酸バリウムの粒子の大きさや形状が均一であることが非常に重要です。チタン酸バリウムの粒径(粒子の直径)は、小さいものでわずか15nmほど。こうした小さい粒子であっても、均一にコントロールできる技術をもっています。

超微粒粉
MLCCは、薄い誘電体の層の上に電極を印刷し、それを積み重ねてつくります。製品がとても小さいため※、印刷のわずかな不具合が製品不良につながってしまいます。太陽誘電では、印刷のにじみ・かすれが発生しない技術を確立し、高精度な印刷を行っています。
※太陽誘電の商品で最も小さいサイズは0201サイズ(0.25mm×0.125mm×0.125mm)です

印刷用の高精度スクリーンマスク(拡大)
MLCCの1層は、薄いものでわずか300nmほどです。1層を薄くして、たくさん積み重ねることで、MLCCに蓄える電気の量を増やすことができることから、薄層シートをズレなく積み重ねる技術は非常に重要になってきます。太陽誘電はこの積層技術を高度化し、1,000層以上の積層構造をもつ商品もあります。

MLCCの断面(色の濃い方が誘電体層、薄い方が電極層)
1.積層セラミックコンデンサ(MLCC)

どんな製品?
身の回りのあらゆる電子機器に搭載されている電子部品で、「電気を一時的に蓄える」「電圧を安定させる」「ノイズを除去する」などの働きをしています。太陽誘電のMLCCは、材料から開発することにより、小型・薄型・大容量そして信頼性の高い製品を幅広くラインアップしています。
市場環境は?
電子機器は、小型化と高機能化が進んでいます。それに伴い、搭載されるMLCCには小型化と大容量化が求められるとともに、電子機器1台あたりの搭載数は増加傾向にあります。
たとえば、薄型化と高機能化が進むスマートフォンは、部品への小型化要求が特に強い機器です。MLCCは小型化すると静電容量や定格電圧が低下するので、それらの特性を改良して小型化を実現しています。
また、近年、自動車の電子化がますます進んでいます。それらの電子回路に搭載されるMLCCは、小型大容量化と高信頼性の両立の実現が求められています。
2.積層タイプメタル系パワーインダクタ

どんな製品?
電子回路において、インダクタは主に「電圧を安定させる」「電気信号を整える」などの働きをしています。インダクタの構造は巻線タイプと積層タイプがあり、積層タイプには小型化・薄型化しやすいという特長があります。また、メタル系材料を使用することでより大電流に対応できます。これらを組み合わせることで、小型かつ大電流という市場ニーズにマッチしたインダクタを提供しています。
市場環境は?
高性能・多機能化が進むスマートフォンやウエアラブル端末、 センサネットワークなどのIoT関連機器においては、機器をできるだけ長時間稼働させるため、高効率な電源回路が求められます。このような小型・薄型機器には、大電流に対応できる小型・薄型のパワーインダクタが求められています。
3.積層セラミックフィルタ

どんな製品?
MLCCと積層インダクタを組み合わせた構造で、高周波から低周波までの幅広い帯域で、必要な周波数を選別(フィルタリング)するための部品です。
市場環境は?
5G(第5世代移動通信システム)は「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」という3つの特長を持ち、従来より多くの周波数帯が使用されます。積層セラミックフィルタは、5G対応のスマートフォンに欠かせない部品として期待されています。
4.積層圧電アクチュエータ

どんな製品?
電圧を加えると振動する性質のある圧電体を利用し、パネル上でボタンを押す感触や、「ツルツル」「ザラザラ」などの触感を実現することができます。
市場環境は?
自動車内のタッチパネルなどへの搭載です。自動車は近年、スイッチ類のフラットパネル化とタッチセンサー化が進められており、運転時の安全性確保のために、スイッチの操作時にフィードバック(触感)を与えることが必要と考えられています。
5.全固体リチウムイオン二次電池

どんな製品?
太陽誘電が開発している全固体電池は酸化物系の固体電解質を使用した電池です。電解質に固体を使用しており、原理上発火や破裂の心配がなく安全性に優れています。積層技術を活かした構造をしており、電極および電解質の薄層化、多層化をすることで電池容量を高めることができ、小型化と大容量化を両立することが可能です。
市場環境は?
今後ますます普及が予想されるIoT機器や、ウエアラブル機器をはじめとしたモバイル機器は、小型化や薄型化が進む一方で、高性能化や駆動時間の長時間化のため、搭載するバッテリーの大容量化が求められています。一方で、ウエアラブル機器は身に着けるため、バッテリーの発火や異常加熱が生じないよう安全性を高める必要があります。そのため、搭載されるバッテリーは小型で大容量かつ高い安全性が求められ、全固体電池の開発が活発になっています。