財務担当役員メッセージ
売上高4,800億円、ROE15%以上を目標とする「中期経営計画2025」の実現を財務面から支えていきます
取締役専務執行役員
佐瀬 克也
2020年度の業績および前中期経営計画の総括について
2020年度は、年初から世界各地で新型コロナウイルスの感染拡大が発生したため、太陽誘電のビジネスに与える影響を予測することが困難な状況でスタートしました。実際には、パソコンなどの電子機器を活用した在宅勤務や家庭学習の増加、スマートフォンの生産に向けた部品取り込み、自動車の想定よりも早い生産回復などによって電子部品の需要が増加したため、太陽誘電の業績にとってプラスとなる影響が大きく、売上高、利益ともに過去最高を更新しました。
この結果、2020年度を最終年度とする前中期経営計画について、売上高は3,009億円、ROEは12.6%となり、それぞれ目標を達成することができました。営業利益率は目標の15%に至りませんでしたが、13%レベルを3年間安定して出せたことが重要だと捉えています。それにより自己資本比率は60%以上を維持し、ネットキャッシュも実現できたことは評価できると考えています。
成果を出すことができた要因としては、販売先のミックス改善が挙げられます。自動車、情報インフラ・産業機器を「注力すべき市場」と定義し、売上構成比を高める活動を行った結果、狙った比率に近づけることができ、目標達成に大きく貢献しました。前中期経営計画のスタート以前は32%だった注力市場比率は、計画の最終年度には43%まで拡大しており、これは計画期間中だけでなく、それ以前から併せて9年ほどかけて取り組んできたことが成果につながっています。
■前中期経営計画の振り返り

中期経営計画2025について
目標数値と計画期間
中期経営計画2025では、目標数値として売上高4,800億円、営業利益率15%以上、ROE15%以上、ROIC10%以上を設定しています。計画期間は5年間とし、中長期の需要動向を見据えた思い切った投資判断を実施していきます。
ROEとROIC
ROE、ROICともに、成長による収益性向上によって目標達成を目指します。
ROEについては、2020年度実績の12.6%をベースとして、市場の拡大に合わせた成長戦略を遂行すると同時に、前中期経営計画では目標に達しなかったインダクタや通信デバイスの収益力を強化することで、目標である15%以上を達成していきます。
また新たに、資本コストを意識した経営視点として、目標数値の1つにROICを採用しました。現在の太陽誘電の資本コスト(WACC)は8%程度と試算しており、それを上回ることを大前提に、ROICは10%以上を目標としました。実際の運用にあたっては、ROICを製品カテゴリごとにブレークダウンして定期的に状況を把握し、投資を実行する際にも投資回収期間などの基準を設定するなどして、従来よりも事業の選択と集中を高めるために活用したいと考えています。
一方、マクロ経済の急激な悪化や天災、パンデミックなど不測の事態に備え、事業継続のために自己資本の厚みを確保して安全性を担保することは、これまでの経験から必要不可欠だと考えています。これに関連して前年度には、実際に使用することはありませんでしたが、銀行とのコミットメントラインを100億円から300億円に増額しています。
現在の自己資本比率60%レベルを維持しつつ、各事業における収益性向上により、ROE、ROICを高めていきたいと考えています。
成長投資、M&A、研究開発費
中期経営計画2025の達成に向けた成長投資として、5年間累計で3,000億円の設備投資を計画しており、初年度である2021年度は500億円の投資を実施予定です。ターゲットは、主に自動車や情報インフラ・産業機器といった高信頼性市場や通信向けなどのハイエンド市場向けです。コンデンサについては毎年10-15%の能力増強を図っていく予定であり、インダクタ、通信デバイスについても新商品に対する投資を行う計画です。日本、中国、マレーシアでは、この先に新工場の建設も予定しています。需要拡大に備えた投資が先行する予定のため、一時的にバランスが変わる可能性はありますが、強固な財務体質を維持していきたいと考えています。
その他には、投資計画3,000億円のうち1割程度を、環境目標に対応する投資や、事業運営の効率改善に向けたIT投資などに振り向けていく予定です。成長の手段の1つとして、M&Aなど外部リソースの取り込みも考えられますが、今回の計画における投資金額には含まれていません。オーガニックな成長を基本としつつ、M&Aの可能性を探るリサーチは継続し、今後、戦略遂行上必要な場合に検討していく方針です。
一方で、研究開発費は、材料技術などの要素技術の高度化やソリューション創出などを中心に、売上高比率4%レベルを維持していく方針です。現在見えているテーマに取り組むには必要十分な水準と考えていますが、新規事業への取り組みなど、必要性に応じて柔軟に対応していきたいと考えています。
■設備投資額/減価償却費


株主還元について
太陽誘電は、経営理念の1つに「株主に対する配当責任」を掲げています。1株当たり年間配当金については2017年度の20円から2020年度には40円まで増額してきました。
中期経営計画2025では、安定的な配当性向30%の実現という目標を設定しました。株主の皆様に対して、利益水準に応じた配当で利益を還元していくことを目指します。今後については、これまで同様、成長投資とのバランスを勘案しながら安定的に配当金額を高めていきたいと考えています。一方で、必要に応じて、自己株式の取得を進め、総還元性向の向上も図っていきたいと考えています。
■株主還元

