社長メッセージ

エレクトロニクス技術の進化を支え、
会社の成長と社会的貢献の拡大を目指します

代表取締役社長

登坂 正一

目指す姿

将来を見据えた新たなミッションを策定「おもしろ科学で より大きく より社会的に」

太陽誘電は、2020年に創立70周年を迎えることができました。これを機に、30年後の100周年、さらにその先を想像してみました。私たちが持つ強みや、社会から期待される役割、これからの社会のありようを踏まえた未来の姿です。そして、過去・現在・未来にわたって太陽誘電の要となるのは、これまでに蓄積され、体系化されてきた知識や経験に加え、わくわくする体験や思いがけない発見、驚きなどをもたらす「おもしろ科学」であると思い至りました。「おもしろ科学」で人々の安心・安全で快適・便利な暮らしを実現するエレクトロニクス技術の進化を支え、社会に貢献していくことが太陽誘電の使命であると考え、「おもしろ科学で より大きく より社会的に」という新たなミッションを策定しました。太陽誘電は、小さいけれど重要な役割を担う電子部品を生み出し、進化させ、社会のすみずみに届けることで、経済価値と社会価値を兼ね備えたエクセレントカンパニーを目指していきます。

事業環境の変化

身近な暮らしの中でデジタル化が進展

2020年の初めに新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、リモートワークをはじめとする生活スタイルの急激な変化がおきました。身近な暮らしの中でデジタル化が加速し、今後は5Gの普及や、その先の6Gの実現を通して、さまざまな機器がつながる世界がやってくることが予測されます。半導体とそれを支える電子部品は、従来の主要市場である通信機器市場や、自動車、情報インフラ・産業機器市場はもとより、さまざまな市場に活躍の場を広げ、より一層不可欠な存在になっていくでしょう。情報技術、センシング技術が生活のあらゆるシーンに普及し、電子部品の需要は急速に拡大していくと考えられます。

前中期経営計画の総括

売上高、ROEは目標を達成、営業利益率も大幅に改善

2020年度を最終年度とする前中期経営計画は、目標であった売上高3,000億円、ROE10%以上をそれぞれ達成することができました。また、「注力すべき市場」と定義している自動車、情報インフラ・産業機器市場における売上構成比を43%にまで拡大することができました。電子化が加速する自動車や、つながる社会の基盤となる情報インフラ・産業機器市場の売上が増加したことで、季節性や需要のボラティリティが大きいスマートフォンなどの通信機器市場の売上構成比が低下し、安定的かつ継続的に成長できる土台を構築することができたと評価しています。

今後取り組むべき課題としては、コンデンサ以外の商品の収益性改善や、生産性改善活動「smart.E」のさらなる進化などが挙げられます。これらについては、今年度からスタートした「中期経営計画2025」で引き続き取り組んでいきたいと考えています。

中期経営計画2025

マテリアリティ(重要課題)を設定し、経済価値向上と社会価値向上を両立

今年度から新たにスタートした「中期経営計画2025」は、10年後の2030年を見据えて、社会や人々の暮らしの変化、エレクトロニクス技術の進化を想像した上で、2025年をマイルストーンとして位置づけたものです。今回の計画では、経済価値向上と社会価値向上の両立を目指し、SDGsと紐づけたマテリアリティを設定しています。電子部品メーカーである太陽誘電は、事業活動を通じてSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」への貢献や、資源の有効活用と循環型社会構築への貢献などにより目標12「つくる責任 つかう責任」への貢献を果たしていけると考えています。

具体的には、経済価値と社会価値の向上に寄与する4つの重点施策を策定し、事業におけるKPIだけでなく、E(環境)、S(社会)についても数値目標を掲げています。経済価値を測る財務目標は、売上高4,800億円、営業利益率15%以上、ROE15%以上、ROIC10%以上としています。

事業戦略としては、引き続き注力市場の開拓を進め、自動車と情報インフラ・産業機器向けの売上構成比50%を目指します。これに加えて、新商品の拡販を進めていきます。材料技術をはじめとする要素技術のさらなる高度化により、高付加価値な積層セラミックコンデンサ(MLCC)、メタル系材料を用いた積層インダクタ、5Gの進化に不可欠な通信デバイスなどで優位性を発揮するとともに、生産性改善活動「smart.E」によって、収益性を一層向上させたいと考えています。また、太陽誘電が培ってきた材料技術やプロセス技術の強みを活かした小型の全固体電池の開発にも継続して取り組み、従来コイン電池などの小型電池を使用している小型機器の市場、ウエアラブル市場などをターゲットにしていきます。

一方、社会価値向上に関しては、GHG排出量、廃棄物、水使用量などの環境分野、職場の安全や働き方改革などの社会(人材)分野でKPIを設定し、取り組みを加速していきます。

※GHG:温室効果ガス

写真:登坂 正一

新事業の創出

社会課題解決型のソリューションを展開

新事業は、デバイスやモジュールの提供にとどまらず、それらを活用したソリューションを含む提案をすることで、社会課題解決への貢献を目指しています。すでに事業化しているものとしては、電動アシスト自転車向けのエネルギー回生システムがあります。走行中に自動充電を行うシステムで、脱炭素型のニューモビリティを実現しています。その他にも、小型で設置が容易な水害監視システム、光無線通信技術を応用した交通監視ソリューション、光変位センサを用いた橋梁モニタリングの実証実験などを展開しており、安心・安全に暮らせる社会の実現を目指して開発に取り組んでいます。引き続き、太陽誘電の独自技術と社外のリソースを融合し、成果を出していきたいと考えています。

高収益体質および収益安定化に向けた取り組み

生産性改善活動「smart.E」は、収益力強化だけでなく、リスク低減にも重要

太陽誘電は、ものづくり力と収益体質の強化策の1つとして、生産性改善活動「smart.E」を推進しています。中期経営計画2025では、将来の電子部品の爆発的な需要増を見込み、5年後の売上目標を約1.6倍に設定しています。事業拡大を実現するには、積極的な設備投資による生産能力増強に加えて、設備あたりの生産性も向上させる必要があり、「smart.E」の進化が不可欠であると考えています。

この活動では、生産現場の見える化から始まり、異常の早期発見、さらには異常の未然防止へとつなげ、ムダ・ムラ・ムリのない生産体制構築を目指しています。事業ごと、拠点ごとに進捗度には差がありますが、「smart.E」を導入したある工程では30%の生産性向上が見られることから、相当な成果を期待しています。

加えて、「smart.E」では、品質のバラツキを極限まで低減するため、属人的な作業を排除して自動化を進めています。また、どの工場でも同じ品質の商品が生産できるようになることで、ボーダレスな生産体制の構築にもつながります。今後も、サプライチェーンへのさまざまな脅威が予測されるなか、生産性向上だけでなく事業継続体制を強固にしていくためにも、「smart.E」を各拠点において展開し、推進していく考えです。

ESG戦略(環境)

2030年のGHG排出量を25%削減

ロゴ:WE SUPPORT UN GLOBAL COMPACT

太陽誘電は持続可能な企業活動を重視し、ESGに関する取り組みを強化してきました。その一環として、2020年に「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、UNGCの「人権」・「労働」・「環境」・「腐敗防止」の4分野からなる10原則を強く支持しています。中期経営計画2025においても、経済価値指標だけでなく、GHG排出量や、廃棄物量、水使用量の削減といった環境関連指標を設定しています。

これまでも太陽誘電はGHG削減に取り組み、10年間で原単位ベースのエネルギー使用量を半減するという、2020年度を最終年度とした環境中期目標の削減目標を達成しました。しかし、社会全体が2050年のカーボンニュートラル実現に向かう中で、GHG排出絶対量を削減する方針に切り替えました。そして2050年にカーボンニュートラルの達成を目指すマイルストーンとして、生産・事業活動におけるGHG排出量の絶対量を、2020年度を基準として、2030年度までに25%削減することを目標として設定しました。

目標達成に向けては、脱炭素思想に基づいたものづくりを行う考えです。省エネ、創エネ、再エネを徹底し、さらには2021年5月に賛同した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の枠組みにおいて、今後のシナリオ作りや戦略策定に取り組みます。このような環境に対する配慮や対応は、太陽誘電の持続可能性や競争力を高め、今後の成長と収益性向上につながると考えています。

※原単位:一定量の製品を生産するのに必要なエネルギー消費量を表す単位。省エネルギーの進捗状況を見る指標として用いられる

ESG戦略(社会)

価値を生み出すのは、従業員が健康でいきいきと活躍し能力を発揮できる環境

太陽誘電は、従業員が仕事で活力を得て、健康でいきいきと能力を発揮してこそ価値創造が実現できると考え、人材への取り組みを重視してきました。経営ビジョンの中には「安全第一」を掲げ、従業員の安全に配慮した取り組みを継続してきました。その結果、労働災害発生率は国内製造業の平均を大きく下回ってトップクラスであり、中期経営計画2025においても、継続して安心安全な職場づくりに取り組んでいく方針です。

また、従業員がやりがいを感じながら仕事ができる環境づくりのため、働き方改革・ダイバーシティを推進しています。その実現のために目指すべき水準として、ワークエンゲージメントは2.5以上、新卒女性採用率30%以上という数値目標を設定しました。一人ひとりを尊重し、多様な個性をつなげて活かすという考え方のもと、それぞれの取り組みを強化しています。

さらに、これらを実現するには、まず従業員が健康であることが基本です。2019年には「太陽誘電グループ健康経営宣言」を行い、私自身が健康管理最高責任者(CHO)となって陣頭指揮をとっています。2020年度には国内全グループ会社において、敷地内全面禁煙としました。今後は「食」への配慮などさまざまな活動を展開し、従業員の健康増進をサポートしていきます。

※ワークエンゲージメント:仕事に対して誇りややりがいを感じるかどうかの心理状態を表す指標。仕事への「熱意」「没頭」「活力」の3要素で構成される

写真:登坂 正一

ESG戦略(ガバナンス)

サステナビリティ関連活動を統括する「サステナビリティ委員会」を設立

コーポレートガバナンスは、企業の長期的・持続的な成長の土台であり、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実践することを基本とし、ステークホルダーとの対話から得た意見を取締役会で共有・議論して、経営に反映していくことが重要であると考えています。また、体制強化の一環として、太陽誘電のサステナビリティ活動方針やその進捗状況を審議するため、「サステナビリティ委員会」を発足させると同時に、内部統制システムの強化に向けてコーポレートガバナンス体制の見直しを行いました。

CEOの後継者計画(サクセッションプラン)も整備しています。業務執行取締役を後継者候補とし、担当分野のローテーションや重要な経営指標を用いた目標管理の実践などを通じて、候補者の資質向上を図っています。今や財務諸表に表れるような経済価値だけではなく、企業の持続的な成長に欠かせない社会価値を融合したサステナビリティ経営を行うことが企業価値向上につながると認識し、これを実践できることが経営者としての基本的な素養のひとつと考えて、候補者を選考しています。

太陽誘電は、持続的に企業価値を向上させていくために短期的視点を脱し、長期的視点で未来の太陽誘電がどのような存在であるべきかを明確化する必要性を認識し、新たなミッションを策定しました。この未来への第一歩としてスタートしたのが、中期経営計画2025です。目指す姿の実現にも、計画の目標達成にも、株主の皆様、お客様、従業員、地域社会をはじめとする、全てのステークホルダーの皆様と信頼関係を構築し、ともに発展していくことが不可欠です。皆様におかれましては、引き続きご支援をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。