財務担当役員メッセージ

変化の兆しをいち早く捉え、
太陽誘電の目指す姿の
実現に向けた取り組みを
支えていきます

取締役専務執行役員

佐瀬 克也

基本的な財務戦略

太陽誘電は、「おもしろ科学で より大きく より社会的に」というミッションの実現を目指して事業活動に取り組んでいます。太陽誘電が事業を展開しているエレクトロニクス分野は、世の中のDX化の進展に伴い、電子部品の需要が爆発的に伸長している過程にあります。このため太陽誘電は、市場成長を上回る収益拡大を実現すべく、成長投資の実行と財務健全性の維持、この2つを両立させることを財務戦略の基本においています。

財務健全性については、自己資本比率60%を基準にしており、近年は安定的にこの水準を保っています。

2021年度の業績

2021年度の外部環境は、前年から続く新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあったものの、自動車の電子化・電動化や、情報インフラへの積極投資などに伴い、電子部品の需要は総じて堅調に推移しました。それを受けて、売上高は前年度比16%増の3,496億円、営業利益も同67%増の682億円と増収増益になりました。売上高から親会社株主に帰属する当期純利益まで全ての段階で過去最高益を更新することができ、財務の健全性の目安としている自己資本比率も63.1%となりました。

中期経営計画2025について

経営指標

中期経営計画2025では、最終年度の目標数値として売上高4,800億円、営業利益率15%以上、ROE15%以上、ROIC10%以上を設定しています。計画初年度である2021年度は、このうち売上高を除く3つの指標について目標を達成できました。今後もこの目標を安定的に達成できるよう、取り組みを強化していく考えです。

ROEとROIC

太陽誘電では、ROEの改善を収益性向上によって実現することを基本としています。そのためには、高い付加価値を提供できる分野での成長が不可欠です。販売拡大に注力している自動車市場や情報インフラ・産業機器市場においては、コンデンサに続いて、インダクタでも拡販活動の成果が出始めており、メタル系パワーインダクタなどのハイエンド品も売上が増加しています。一方で、選択と集中による適切な投資と事業の収益性向上も重要であると考えており、ROICを判断の1つの手段として使っています。複合デバイスの一部である無線モジュールについては、2021年度に事業譲渡を実施しました。

それに加えて、生産性向上により総資産回転率を上げていくこと、棚卸資産については需要の先行きやBCP在庫の確保も含め、状況変化に応じた適正水準を維持していくことにも継続して取り組んでいきます。今後も、基本的には、ROE、ROICともに、成長による収益性向上によって目標達成を目指します。

成長投資、研究開発費、M&A

成長投資としては、2025年度までの5年間累計で3,000億円の設備投資を行う計画です。計画初年度である2021年度の実績は340億円となりました。2022年度は日本での新工場建設を含め600億円を計画しています。さらに、2023年度には中国、マレーシアで積層セラミックコンデンサ(MLCC)の新工場が完成予定であり、設備投資額は中計期間中の中盤が高くなるよう設計しています。また、MLCCやインダクタへの投資については、自動車や情報インフラ・産業機器などを対象とした高信頼性商品やハイエンド商品の増産を中心に実施していく計画です。中でも、MLCCは年率10-15%の能力増強を図っていきます。

能力増強以外においても、3,000億円のうち10%程度を割いて、環境目標に対応する投資や事業運営の効率改善に向けたIT投資を行います。環境対策投資についてはR&Dセンターの再エネ100%化を発表しましたが、こちらは2022年度に事前準備工事を始め、2024年度より再エネ100%が実現できる見込みです。

研究開発費については、材料技術などの要素技術の高度化やソリューション創出などを中心に一定の金額を継続して投資する方針であり、現在は売上高比率4%レベルとなっています。また、中期経営計画2025はオーガニックな成長によって達成できると考えていますが、M&Aもさらなる成長のための一手段として捉えて常にアンテナを張り、事業戦略遂行上の必要性をもとに検討してまいります。

■キャピタル・アロケーション(億円)
図:長期経営計画2025。IN:資金調達200、営業CF3,400。OUT:設備投資3,000、株主還元600。

株主還元について

太陽誘電は、経営理念の1つに「株主に対する配当責任」を掲げています。その責任を果たすため、近年増配を続け、1株当たり年間配当金については2017年度の20円から2021年度には80円まで増額してきました。今後は、成長投資と株主還元のバランスを見ながら、安定的に配当を高めていく方針です。2021年度の配当性向は18.5%となりましたが、新工場建設などの大型投資の目途がある程度ついた段階で、配当性向30%の実現を目指す考えです。

近年話題になるTSR(株主総利回り)は、投資家目線という意味で重要と考えています。キャピタルゲインにつながる利益成長を重視し、インカムゲインにつながるフリーキャッシュフローを増やしていく。成長に必要な投資を優先して実行しながら、投資効率の向上につながる生産性の改善を進めていくと同時に、株式市場の状況などによっては機動的な自己株式の買い入れなども視野に入れた取り組みを進めます。また、中期経営計画2025では、経済価値に加えて社会価値の向上も経営指標として掲げており、総合的な企業価値向上を目指しています。これらによって、より安定的な成長を実現し、ステークホルダーの期待に応え、最終的にはTSRの向上につなげていきたいと考えています。

■株主還元
図:株主還元
自己株式取得額(左軸)、配当金総額(左軸)、総還元性向(右軸)、配当性向(右軸)
■株主総利回り(TSR)
図:株主総利回り(TSR)。2016年度比の2021年度、太陽誘電408.0%、TOPIX(配当込み)約150%

現在、中期経営計画2025の2年目ですが、環境や状況の変化、特に良くない変化については早期に兆しを見極めて、最適な手を打っていく必要があります。目指す姿に向かって邁進するのがCEOの役割だとすると、財務責任者の役割は、変化に気付く感度を高め、変化に対応する施策を講じることで、目指す姿の実現に向けた安定成長を後押ししていくことだと考えています。財務責任者として、市場環境や会社の状況を始めとするさまざまな変化を敏感にキャッチする存在となり、中期経営計画2025の遂行を支えてまいります。