社外取締役座談会

成長に合わせたガバナンスの進化を目指して

太陽誘電は、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指し、コーポレートガバナンス体制の最適化を進めています。太陽誘電のガバナンスの現状や、「中期経営計画2025」における社会価値目標の変更に関する議論などを踏まえ、社外取締役の平岩氏、小池氏、浜田氏に語っていただきました。

  • 社外取締役

    平岩 正史

  • 社外取締役

    小池 精一

  • 社外取締役

    浜田 恵美子

太陽誘電のガバナンスの現状

平岩:太陽誘電はコーポレートガバナンスに対する取り組み姿勢が非常に真摯で誠実だと感じています。コーポレートガバナンス(CG)・コードの改訂を速やかにフォローしており、ガバナンスの強化は順調に進んでいると考えてよいのではないでしょうか。2021年のCGコード改訂の柱である取締役会の機能強化、中核人材における多様性の確保、サステナビリティを巡る課題への取り組みの3点に対しても、具体的な解決に向けて議論・検討を進めています。

小池:実効性評価で認識された課題にも着実に取り組んでいます。サステナビリティ委員会の設置はその1つで、2020年度の実効性評価課題に対する対策です。サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関する課題の共有や、その解決に向けた施策について審議しています。また、ESGに関する5つの下位委員会を持ち、これらを束ねる形で、非常にうまく機能していると思います。サステナビリティ委員会において報告・審議されたことは取締役会へ報告されるので、必要なテーマを深掘りする土壌ができました。こうした活動が定着していくように、うまく運営していければと思います。

平岩:サステナビリティ委員会はすでに数回開催されており、運用については順調に滑り出したと感じていますが、報告に対するフィードバックがなかなか進化していかないことにはもどかしさも感じています。つまり、サステナビリティは大きなテーマであるため、報告を受けた上でこうすべきだ、という方向性がすぐに打ち出せない状況です。しかし、まだスタートしたばかりということもあり、焦らずに中期的に見ていくことが必要だと考えています。

写真:平岩 正史

浜田:サステナビリティ委員会ではさまざまな議論が行われていますが、その中でも、サステナビリティに関する課題を自分事として捉え、それぞれが業務に落とし込んだ議論が行われるようになっているのは高く評価できます。中身が次第に深まってきていると感じていますので、今後のさらなる取り組みにつなげていただきたいと思います。

中期経営計画2025の進捗状況
(経済価値と社会価値)

平岩:2021年度の業績は非常に良い結果で、営業利益とROE、ROICに関しては目標数値を達成することができました。今後も、緊迫する国際情勢や、マクロ経済の減速感など外部環境の変化があっても、継続して目標達成していくことが大切かと思います。

経済価値が向上する一方で、社会価値に関連する部分は課題があります。中でも人材に関しては、目標達成するためにやるべきことが山積していると思います。

浜田:ダイバーシティに関しては、新卒女性採用比率30%以上という目標に加えて、女性管理職比率を2030年度に10%以上とする目標を定めました。この目標達成は簡単なことではありません。評価制度、キャリアプランなど、基本となる部分から考え直さないといけない課題であることは間違いありません。

また、ジェンダーの面のみにフォーカスするのではなく、本当の意味で多様な人材を受け入れる仕組みを作ることが必要だと思います。幸い太陽誘電には、これまでも中途採用者を比較的多く受け入れてきた実績があります。この経験を生かして、海外での採用を拡大したり中途採用を増やしたり、あるいは若く優秀な人材を迎え入れて高いポジションにつけるなどの思い切った手を打つことによって多様な人材が活躍できる場を作ることが、結果として新卒女性採用比率、女性管理職比率の拡大につながると考えています。

小池:人材の問題は、女性の活用だけではなく、外国籍の人や若い人に活躍してもらうといった広くダイバーシティの問題であるという浜田さんの意見に同感です。太陽誘電は設立から20年以上経過した海外拠点をたくさん持っているわけですから、現地の人材を思い切って登用するなどの施策も必要ではないかと思います。

写真:小池 精一

平岩:中期経営計画2025では、環境への取り組みも重要なテーマの1つです。計画に関する大きな変更点として、昨年の計画スタート時に設定したGHG(温室効果ガス)排出量の削減目標の修正があります。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)での、産業革命前からの平均気温上昇を1.5℃に抑えるよう努力するという国際合意を前提として、2030年度に向けたGHG排出量の削減目標を、2020年度比25%削減から42%削減へ上方修正しました。世の中の動きにキャッチアップして削減目標が大幅に上方修正されたことは、サステナビリティ委員会を中心にマテリアリティに関する議論ができているということであり、それを受けた会社の判断も正常に機能していると評価できます。

浜田:GHG排出量の削減は、達成することが特に難しい大きな課題です。正直なところ、今の世界情勢でエネルギー問題を取り巻く情勢を鑑みても、こうすれば確実に削減できるという道筋が見えない状況です。その中で、自発的に自分たちは何をやるのか、しっかり目標を立ててやっていかないといけない。目標達成は簡単ではないと思います。

しかしながら、R&Dセンターの使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを決めたように、各事業所や事業部といった現場が自分たちの最終的な目標は何かを意識しながら、具体的な取り組みを始めているのを実感しています。

当初は「そんなの無理だよ」という本音が垣間見えることもありましたが、この1年間でこんなに変わったのは、うれしい変化です。

報酬に関する取り組みについて

小池:私は報酬委員長を務めていますが、2021年度の報酬委員会では、企業戦略と整合的な役員報酬体系を検討し、取締役会に答申しました。従前の太陽誘電の報酬制度も、報酬決定方針に従ってうまく組み立てられていましたが、制度設計時点から社内外の状況も変化していることから、報酬委員会で課題を整理し、制度設計の見直しを行いました。

今回は、基本報酬、業績連動賞与、株式報酬型ストックオプションの比率が4:4:2という構成比は維持しつつ、賞与の個人別評価の指標に中期経営計画2025の社会価値目標の達成度を追加したり、株式報酬については一部を中期経営計画2025の経済価値指標であるROEに連動させたりと、中期経営計画の達成度に応じてインセンティブを働かせる仕組みとしました。

基本報酬、業績連動賞与、株式報酬型ストックオプションに関する他社の状況について、外部の調査機関によると、2020年度の国内企業928社の構成比率は、57:26:17だったそうです。これをみると、太陽誘電は固定報酬の比率が低いことが分かります。

平岩:私は、現状の4:4:2の構成比は適正だと思います。太陽誘電は現在成長ステージにあります。業績向上に向けたインセンティブをぜひとも意識してほしいですし、さらに今後は人材の多様化という観点で、国内外の優秀な人材を採用したいと考えた時に、変動比率が高いのは有効であると思っています。

中長期視点での取締役会の構成や指名に関する取り組みについて

小池:優れたCEOを持つことが、企業の未来を左右する非常に大切な要素であり、コーポレートガバナンスの肝とは、優れたCEOを選んで育てることに尽きるとさえ考えています。そういった意味で指名委員会の役割は非常に大切ですが、経営陣の後継者候補の育成状況、あるいは次期CEOの登用にあたっての基準やプロセスについては、さらなる改善の余地があると感じています。

平岩:私は指名委員長を務めていますが、小池さんの言われたとおり、CEOの後継者計画については、改善していく必要があるでしょう。この点については、業務執行取締役や委員会事務局その他関係者と連携して、取り組んでいかなければなりません。

浜田:指名委員会においては、どのような資質をもった人材が取締役会を構成していくかを議論することも大切です。開示されているスキルマトリックスは現在の太陽誘電に適合していますが、将来の太陽誘電のあるべき姿を考えた時にどのようなスキル・経験を有する取締役が必要か議論を深めたいと考えています。これは昨年度の実効性評価でも課題としてあげられています。これから先、会社をどうするかという大きな画を書き、その画を実現するための必要スキル・経験は何かを定義し、それらを有する人材を取締役候補者に任命するというプロセスを確立する必要があると思います。

写真:浜田 恵美子

平岩:中長期視点での取締役会構成のあり方については、昨年度の実効性評価で課題としてあげられていました。繰り返しになりますが、太陽誘電は成長ステージにあります。成長に合わせて洋服を適正なサイズに変えるように、取締役会も会社の成長に合わせて最適な構成にする必要があります。ジェンダーや国籍、年齢といった要素以外に、経験の多様性も重要になります。そういった視点で、スキルマトリックスや取締役会の構成について議論を重ねていくことが重要です。