社外取締役 座談会

太陽誘電の持続的な価値向上に向けて

太陽誘電は、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指し、コーポレートガバナンス体制の強化を継続しています。佐瀬新社長への期待、人的資本やサステナビリティ委員会の取り組みなどをテーマに、社外取締役の平岩氏、小池氏、浜田氏に語っていただきました。

  • 社外取締役

    平岩 正史

  • 社外取締役

    浜田 恵美子

  • 社外取締役

    小池 精一

新体制により変わること、変わらないこと

平岩:今年6月に佐瀬さんが社長執行役員(以下、社長)に就任して、新体制がスタートしました。私は指名委員会の委員長という立場で佐瀬さんと面談したのですが、穏やかな口調の中にも覚悟を感じ取れたことが印象的でした。特に記憶に残っているのが、「現中計を着実に実行する」「太陽誘電の経営理念を実現していくことが使命」という佐瀬さんの発言です。

太陽誘電の経営理念は、「従業員の幸福」「地域社会への貢献」「株主に対する配当責任」の3つであり、SDGsと重なる点が多いものです。経営理念を重視し、社会からの要請にも応えるように会社を進めていこうとしている、それを中計の目標達成という地に足の着いた考えで実現していこうとしているという点で、これらの言葉が非常に印象に残っています。

写真:平岩 正史

小池:私も昨年度に社長候補者として面談した際、強い覚悟を感じました。今年度は、中期経営計画2025(以下、中計)のちょうど折り返しの年ですから、日々変化する外部環境をしっかり見極めて、財務・非財務の目標を達成できるようにマネジメントしていただくことを期待しています。

浜田:登坂会長と佐瀬社長はタイプが全然違うと思いますが、二人に共通しているのは、技術に詳しいことと、物事を緻密に進めるタイプであること。そのため非常に安心感があります。そういう意味で、技術を中心に据えた太陽誘電らしさは変わらないと思います。

一方で、年齢的に若返るので、これから上を目指す人にとっては大きな刺激になると思います。社長交代によって、会社が次のステージに進むということ、そして、それを担うのは自分たちだという意識が高まることが期待され、現中計だけでなく、それから先への建設的な議論も活発化することを望んでいます。

取締役会で行うべき人的資本に関する議論

浜田:取締役会の実効性評価で取り組むべき課題として挙げられている「経営戦略とひも付けた人的資本への投資」については、世の中の流れに乗ってという単純な動機にならないように、経営戦略そのものをあらためてしっかりと議論する必要があると思います。その上で、経営戦略を実行するにはどのような人材がどの程度必要かを見定めて、必要な人材を確保するための投資をすることが人的資本の基本です。社内育成はもちろん外部から人材を登用するなど人材確保の方法も含めて検討していく必要があり、そういう意味では、太陽誘電は議論の入り口に立った段階です。

平岩:経営層の後継者育成(サクセッション)については、候補者の人材データベース化を進めている一方で、まだ抽象論にとどまっているところがあり、もう少し組織的に管理して議論していければと思っています。

小池:社内を見ると、従業員の階層別教育は体系化されて、きっちり行われていることが分かります。一方、役員に関しては、平岩さんがお話しされたように、サクセッションプランの改善余地が大きいと私も思っています。

写真:小池 精一

サステナビリティ委員会が生んだ変化

小池:かつての太陽誘電は、経済価値と社会価値がトレードオフの関係にあるとみて、経済価値を優先させてきました。しかし、サステナビリティ委員会の活動を通して、従業員の意識が変わってきたという印象はあります。社会価値を重視することが経済価値を生み出す前提であるという考えが浸透し、環境を始めとするさまざまな取り組みに進化が見られています。具体的な事例としては、2022年度に気候変動への取り組みが国際環境非営利団体のCDPから高く評価され、最高評価のAリスト企業に選定されました。

浜田:サステナビリティ委員会で扱っているテーマは、環境、安全、健康の問題など、広範囲にわたりますが、ここにきて全体を取りまとめて見ていく体制ができてきたと思います。特に、電子部品の需要拡大を受けて生産量が上がっていく中でGHG絶対量を削減するという、高い目標を掲げている環境の取り組みについては、この1年間で着実に成果を出しています。従業員の皆さんがサステナビリティにしっかり取り組んでいると実感できるようになってきました。

平岩:抽象論になりますが、法律家である私の目線で見ていると、「会社は誰がコントロールするのか」という議論に対する考え方の変化とサステナビリティの取り組みには相関があると考えています。それに対する初期の答えは、株主でした。その後、ステークホルダーという概念のもと、株主だけではなく取引先、従業員などが会社をコントロールするという考え方が主流になりました。現在は、「社会が会社をコントロールする」という時代に入っています。

つまり、社会の要請を受け入れないと、企業は生き残れない。受け入れないと企業価値は上がらないという時代になってきています。このような時代においては、サステナビリティ活動はやっておけばよいではなく、必ずやるべき活動になっています。太陽誘電において、サスナテビリティ委員会で取り組むテーマは、もはや企業の存続のための必然となりつつあることをより感じて、活動を推進していくべきかと思います。

小池:サステナビリティと経営の関係で言うと、報酬委員会では昨年度、サステナビリティへの取り組みの動機付けとなるような報酬制度の設計を行いました。役員賞与は基本的には連結純利益に応じて支給額を決めますが、担当組織の達成度、中計の非財務指標(ESG要素)などの達成度を乗じる仕組みに変更しています。このインセンティブの変更がどのように成果をもたらすか、注意深く見ていきたいと思います。

太陽誘電の中長期的な価値創造に向けて

小池:これまでの太陽誘電は、材料技術を活かしたものづくり企業として、グローバルに拡大してきた歴史があります。すなわち、材料から製品まで一貫した開発、あるいは製造でイノベーションを繰り返してきたことによって、ここまで成長しました。これからも世界中から期待される企業であり続けるには、既存事業の収益性向上やイノベーションの創出が必要であり、そのためには今まで以上に「人」が重要になると考えています。

浜田:近年は、市場の急拡大を背景に、生産能力拡大に注力してきました。その過程では、従業員にも相当の負荷が掛かってきたかと思いますが、順調に投資が進み、事業の規模は大きくなりました。さらに、経済価値を追求するだけでなく、社会価値とのバランスも考えられる視野も、会社全体として持てるようになってきました。そういう意味では、1つ上のステージの会社になるだけの下地ができてきたと思っています。

写真:浜田 恵美子

平岩:新社長の佐瀬さんが陣頭指揮を執り、現中計にとどまらず、その先も彼がリーダーとして太陽誘電を牽引していくことに期待しています。小池さん、浜田さんがおっしゃったように、持続可能な体制はほぼ出来上がってきているので、若い人たちの力で次のステージに向けてがんばってほしいと思います。