統合報告書 TAIYO YUDEN 2018

特集

IoT時代における成長戦略

あらゆるモノがインターネットにつながるIoT時代が到来しつつあります。IoT時代においては、当社関連製品の需要も飛躍的な伸びを示すことが予想されており、その潮流に対応した取り組みを進めています。

 CPS※/IoT市場の世界需要額見通し(単位:兆円)
									2016年194.0兆円が2030年には404.4兆円(予想)で約2倍に

ソリューションサービス
IoT機器
※CPS:サイバーフィジカルシステムの略。センサネットワークなどで多様なデータを収集し、それらを活用・分析して効率的かつ高度な社会の実現を目指すサービスおよびシステム。
将来予測の出典:電子情報技術産業協会「電子情報産業の世界生産見通し注目分野に関する動向調査」

IoT機器とともに関連サービス市場が拡大

IoT時代は、単に多数の機器がネットワークにつながるだけではありません。 ネットワークを通じて集積されたデータを活用して新たなサービスを生み出し、 現在の世界が抱える社会的課題解決につながるソリューションを提供することが期待されています。

データセンター、ビッグデータ、AI(人工知能)
						自動車など、エネルギー、セキュリティ、産業機器、スマホ・ウエアラブル

年率5%強でIoT機器市場は成長

単体で動いていた電子機器がネットワークで接続され、膨大な量のデータをやり取りするようになるIoT時代。電子情報技術産業協会による試算では、さまざまな機器のIoT化が進み、2016年には66%程度であったIoT化率が2030年には86%にまで高まるという予測になっています。この試算によれば単体製品のIoT化が進み、今後2030年までにIoT機器市場は年平均5.6%増の成長が見込まれています。機器単体の需要増と機器1台当たりの電子部品搭載量増の相乗効果で、電子部品の需要はIoT機器以上の拡大が予想されます。

2030年IoT全体市場は400兆円に

IoT時代には、IoT機器単体の需要が拡大するだけでなく、それらの機器を活用したソリューションサービスの拡大も期待されています。例えば、高齢化の進む日本では見守り・緊急通報サービスなど、介護福祉分野でIoTを活用したサービスが生まれています。また、流通・物流分野では無人配送システムの検討が始まるなど、これまでになかったサービスが創出される結果、2016年には全世界で194兆円規模であったIoT市場が2030年には404兆円となるという見通しが出されています。

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IoT時代における事業戦略

当社はこれまで、主力商品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)の技術的優位性を最大限活かすことのできるスマートフォンなどの、通信・情報分野向けなどを中心とした製品展開を進めてきました。近年、MLCCの技術進化によって、より一層の耐電圧化、大容量化が可能になってきたため、より幅広い分野での拡大を目指すと同時に、IoT時代到来による需要増で新たな成長を実現しようとしています。

拡がる事業ポートフォリオ

当社はMLCCが得意とする小型化、薄型化に向けた技術進化を常にリードし、スマートフォンなどの通信機器やタブレット端末などの情報機器向けで確固たる地位を占めるまでになりました。一方で、収益の多角化と成長市場での拡大を狙いに、MLCCの進化で磨き上げた強みを、通信機器や情報機器以外の市場で展開する取り組みも進めてきました。現在では、今後IoT化が進む領域やMLCC以外が主力となってきた領域、例えば自動車、産業機器市場などに対し、大容量のMLCCや大型の電力コンデンサを提案するなど、さまざまな市場への展開を目指しています。

事業ポートフォリオの拡充で収益の安定化に

自動車、産業機器などの分野への展開には、収益の拡大に加え、収益の安定化という目的もあります。自動車市場や産業機器市場は、季節性による機器の需要サイクルの影響が少なく、この分野における売上拡大は、当社の設備稼働の安定化につながるからです。さらに、これらは通信機器、情報機器と比べると、需要変動の波が小さいために、外部環境が悪い年でも一定の利益を確保できるという特徴があります。

コンデンサ事業の方向性
					Topics
エルナーを子会社化当社は、耐振、耐湿、耐圧、耐高低温の環境下でも高品質、高性能を維持できる製品開発力や車載市場に販売ネットワークを持つ、電解コンデンサメーカー「エルナー株式会社」を、2018年4月に子会社化しました。エルナーの持つ人材、知財、ネットワークなどを活かし、車載向け、産業機器向けの市場浸透を加速していきます。
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注力分野における製品と成長戦略

IoT時代到来で増大する電子機器の需要増に合わせて電子部品の需要急拡大が見込まれるなかで、太陽誘電は次の注力分野において成長戦略を推進しています。

将来予測の出典 : 電子情報技術産業協会「電子情報産業の世界生産見通し注目分野に関する動向調査」

自動車市場

求められる商品特性

近年の自動車はADAS(先進運転支援システム)に代表される電子制御化やxEVによる電動化が進み、それに伴い搭載する電子回路が増加しています。特に、ECU(Electric Control Unit)を高温のエンジンルームへ設置することが増えており、そこで使用される電子部品には高温対応が求められます。また同時に、衝撃や振動に強いことも求められています。

※ EV(電気自動車)、HEV(ハイブリッドEV)、PHEV(プラグイン・ハイブリッドEV)などの総称

太陽誘電の主な自動車市場向け部品

高信頼性商品群
(MLCC/インダクタ)

・車載用受動部品に対する認定用信頼性試験規格「AEC-Q200」対応など

高信頼性部品 樹脂外電MLCC

将来予測(自動運転車)

2016年0.4兆円→2030年31.4兆円

成長戦略

当社は自動車向けの売上構成比を現在の9%から15%まで拡大することを目指して活動しています。これまでに培ってきた材料技術や構造設計を高度化し、MLCC、インダクタの高温・耐振対応製品を商品化しています。さらに、品質管理強化のため、生産プロセスの見える化を推進しており、一環として、商品ひとつひとつに固有のデータマトリックスコードを印字して工程のトレースを1個単位で可能にした商品も展開しています。

産業機器市場

求められる商品特性

基地局通信装置やサーバなどのICTインフラの需要が急速に高まっています。これら機器の電源回路では、安定的に動作させるため、MLCCと電解コンデンサが多数併用されています。産業機器市場では信頼性が重視されるとともに、大容量・小型で周波数特性の良いMLCCへの期待が高まっています。

太陽誘電の主な産業機器市場向け部品

MLCC/インダクタ

・高耐圧、大容量、大電流

産業機器向け高耐圧MLCC

将来予測(放送・通信のCPS/IoT市場)

2016年19.3兆円→2030年25.0兆円

成長戦略

当社は、1,000μFのMLCCを世界で初めて商品化するなどMLCCの大容量化をリードしており、電解コンデンサからMLCCへの置き換えを可能とする提案を行っています。置き換えにより、電解コンデンサを使用した場合よりも実装面積の削減に寄与することに訴求した商品ラインアップの拡充を進め、電源回路のオールMLCC化を後押ししています。

エネルギー市場

求められる商品特性

太陽光発電などの再生可能エネルギーや、電動アシスト自転車、xEVに搭載されるキャパシタなどで需要拡大が期待されています。長時間持続的に稼働することが求められており、故障なく安定的に稼働することが必須条件となっています。

太陽誘電の主なエネルギー市場向け部品

リチウムイオンキャパシタ
「LITHOSION™(リソシオン)

・高い高温信頼性と安全性
・長寿命、高エネルギー密度

キャパシタ

将来予測(環境・エネルギー)

2016年2.8兆円→2030年5.4兆円

成長戦略

電動アシスト自転車向けのエネルギー回生システム、太陽光発電監視システムなど、当社が培ってきた要素技術やソフトウェアを組み合わせたソリューション提案で、市場開拓を目指しています。さらに、リチウムイオンキャパシタ「LITHOSION™」の用途開発や安全性に優れた全固体リチウムイオン二次電池の商品化に向けた開発も進めています。

セキュリティ市場

求められる商品特性

社会的に安全志向が高まっており、街中や住居などあらゆる場所で防犯カメラの設置等によるセキュリティ強化が進んでいます。防犯カメラにおいては、電波傍受や通信障害の心配のない、安定した通信環境の実現が求められています。

太陽誘電の主なセキュリティ市場向け部品

光無線通信

・有線通信の設置が困難な場所でも容易に設置
・電波との混信なし。電磁波ノイズの影響なし

光無線通信

将来予測(家庭・個人のCPS/IoT市場)

2016年50.6兆円→2030年106.1兆円

成長戦略

当社が提案する「光無線通信」は、光による1対1の無線通信を安定した速度(100Mbps)で行うことができます。電波を使用しないことで、干渉やノイズの影響を受けず、電波による通信が確保しにくいエリアでも無線通信を実現可能であり、防犯カメラなどの無線通信用途に最適な手段として、提案を進めています。

スマートフォン、ウェアラブル端末市場

求められる商品特性

スマートフォンやウェアラブル端末では、機器の薄型化や多機能化、バッテリーの大型化などに伴い、部品の実装面積が狭くなる傾向が進んでおり、さらなる高密度化を可能とする電子部品の小型化・高性能化が求められています。

太陽誘電の主なスマートフォン、ウェアラブル端末市場向け部品

MLCC/インダクタ

・小型・薄型で大容量、大電流

通信デバイス

・SAW、FBAR、積層セラミック3種類のフィルタ技術で最適提案

MLCC/インダクタ

将来予測(通信機器の世界生産額)

2016年56.8兆円→2030年72.1兆円

成長戦略

高密度化の要求に応えるため、当社が保有する材料技術などを高度化し、MLCCで世界最薄となる0.09mm厚の商品を展開するなど、今まで以上に商品の小型・薄型化を進めています。また、5Gに向けては、SAWフィルタ、FBARフィルタ、積層セラミックフィルタの3つのフィルタ技術を組み合わせたハイブリッドフィルタの開発を進めています。