社長メッセージ
つながる社会を支える電子部品メーカーとして、持続的な成長を実現する
代表取締役社長執行役員
佐瀬 克也
社会の幸せに貢献する「サステナブル・ウェルビーイング」の実現
太陽誘電は「従業員の幸福」「地域社会への貢献」「株主に対する配当責任」を経営理念に掲げ、その実現に取り組んできました。創業者が掲げたこの理念は、今も当社の根本精神として生き続けています。
2021年度から始動した中期経営計画2025(以下、中計2025)の策定時に、これら理念に基づくミッションやビジョンを体系化しました。これにより、当社が進むべき方向性や、従業員が仕事に取り組む上での姿勢が明確になりましたが、私は当社が成長することで社会にどんな価値をもたらすのかという存在意義も示すべきではないかと考えるようになりました。
そこで今回、新たに中期経営計画2030(以下、中計2030)をスタートするに当たり、理念体系にサステナブル・ウェルビーイングという言葉を加えました。これは、人びとや社会が持続的に幸せな状態でいられるよう、当社の事業活動を通じて貢献したいという意思を表したものです。太陽誘電は2030年度を見据え、中計2025をStep1、中計2030をStep2とする10年にわたる計画を策定しました。その後半戦に挑む上で、これまでも事業活動の根底に置いてきた考え方を改めて言語化したものです。より明確さを増した理念体系の下、当社は引き続き、社会課題の解決につながる革新的な技術開発に注力し、ステークホルダーの皆様への貢献と持続的な成長の両立を目指します。
中期経営計画2025の振り返り目標未達からの教訓を基に変化への適応力を強化
中計2025を振り返ると、残念ながら経済価値の目標は未達となりました。スタートから1年半ほどは想定を上回るペースで推移していたものの、その後はその反動で市場環境が悪化し、計画との乖離が広がる結果となりました。環境が悪かったから仕方がないと考えているわけではなく、外部要因が6割、内部要因が4割だったと分析しています。
外部要因としては、コロナ禍や地政学リスクの顕在化など、想定を超える変化が相次いだことが挙げられます。環境変化の中で各市場の需要も大きく変動しました。例えばスマートフォン市場の伸びは想定を大きく下回り、一方で自動車市場や情報インフラ・産業機器市場は大きく伸長。特に中計後半にはAIサーバー向け需要が急拡大しました。
内部要因としては、こうした市場の変化に、製品構成と供給力の面で対応しきれなかった点が挙げられます。また、当社はこれまでもリスク管理を重視してきましたが、改めて振り返れば、発生頻度の低いリスクへの対応は形式的なものにとどまっていました。コロナ禍や国際紛争によるサプライチェーンの混乱などを経験する中で、発生頻度が低くてもひとたび起これば影響の大きいリスクに対し、どこまで現実的に備えられるかが問われたと痛感しています。これらを通じて得られた教訓は、変化に適応できる体質づくりの重要性です。
中計2030では、社会変化や需要の変動サイクルを読み切るよりも、変化へ適応する力を高めることを強く意識しました。ポイントはQ(開発力)C(収益力)D(供給力)を強化しつつ、柔軟に運用できる体制の整備です。需要が伸びる局面では確実に応え、需要が弱い局面でも一定の利益が出せる企業体質へと進化し、環境変化に機敏に対応できる経営を実現していきます。
中期経営計画2030の成長戦略「MLCCメーカー」から「電子部品メーカー」へ
中計2030では、経済価値の目標を中計2025と同じ水準に置いています(→中期経営計画2030経営指標)。数字だけを見ると前回達成できなかった目標への再挑戦と受け止められるかもしれませんが、実際には各事業・各市場の見通しをアップデートして新たに設定した目標です。つまり、数字は同じであっても、中身の組み立ては前回とはかなり異なっており、目標達成の確度も大きく異なると考えています。
中でも大きな違いが事業ポートフォリオの捉え方です。中計2025では、積層セラミックコンデンサ(以下、MLCC)に続く2本目、3本目の柱の育成を重視し、それらの成長に加えて新規事業の拡大も売上目標に盛り込んでいました。結果としては、インダクタは一定の成果が出たものの、通信用デバイスはスマートフォン需要の失速を受けて大きく落ち込み、新事業の立ち上げも難航しました。こうした想定の甘さが目標未達の一因となったことを踏まえ、中計2030では、より現実的な視点で目標を組み立てました。引き続きMLCCを中核に据えつつ、インダクタを確固たる第2の柱と位置付け、両者を軸に確実な成長を見込んでいます。
MLCCとインダクタを両軸とした計画は、目標達成の確度を高めると同時に、当社がMLCCだけではない、電子部品メーカーというポジションを確立していくという意思表明でもあります。安定した成長を実現するには、収益源を複線化していくことが重要であり、MLCCの競争力を更に磨くと同時に、インダクタの成長を加速させることでバランスの取れた企業体質を構築していきます。
設備投資は、足元で需要が拡大している領域に対しては投資時期を前倒しすることも検討していきますが、見通しが不透明な領域まで一律に踏み込むということではありません。将来の成長機会を逃さないことと、投資の規律を保つことを両立させながら、供給力と収益性の両立を図っていく考えです。
つながる社会への貢献に向けて、ハイエンド領域の需要に対応
私たちが中長期的に見据える社会の姿とは、あらゆるものがネットワーク化されデータがリアルタイムに行きかう、つながる社会です。その基盤として、近年、特に市場が急拡大しているのがAIサーバーです。AIの処理能力向上に伴い、消費電力の増加や電力ロス、発熱などが課題となっており、その解決に寄与する高性能なMLCCやインダクタの需要が高まっています。
MLCCの市場は、裾野の広いピラミッド構造をしており、底辺に近い汎用品はプレーヤーが多く価格競争も激しい一方で、頂点に行くほど高い技術力が求められ、対応できる企業は限られてきます。当社が注力するのは後者、すなわちハイエンド領域であり、小型大容量、低消費電力など難易度の高い顧客需要に対し、当社の強みである多様な要素技術を組み合わせて対応することで、市場での存在感を確かなものにしていきます。
インダクタも用途によって求められる性能が異なりますが、当社が強みを持つのは、小型大電流、基板内蔵型など次世代設計に対応できる領域です。そこでは基本性能の向上に加えて、製品サイズなど高い精度が求められ、材料技術だけでなく、ものづくり力にも強みを持つ当社の勝ち筋があると考えています。
電子部品の中でも使用される数量が格段に多いMLCCは、調達リスクの観点から複数社ソースが一般的である一方、インダクタの最先端用途では、技術的に突き抜けた製品がより強いポジションを取れる可能性があります。その意味でも、インダクタは当社が電子部品メーカーとして存在感を高めていく上で、非常に重要な製品群と捉えています。
当社は足元のAIサーバー需要を着実に取り込み、2026年度のAIサーバー向けMLCCの売上は前年度比150%増を見込んでいます(2026年8月時点)。ただし、私たちはAIサーバーをつながる社会のコア市場と捉える一方で、そこだけに偏るのでなく、AIやロボット、自動車・モビリティ、宇宙、エネルギー、ヘルスケア、環境・資源循環など、つながる社会を構成する幅広い領域を見据え、当社の技術力で新たなソリューションを提案していきます。それがミッションに掲げるサステナブル・ウェルビーイングの実現とともに、当社の持続的な成長をもたらすと考えています。
持続可能な事業基盤を整備環境と人的資本へのコミットメント
中計2030では、経済価値と社会価値を企業価値向上の両輪と捉えて双方をバランスよく向上させ、社会で存在意義のある会社に成長していく方針です。この方針に基づき、中計2025からKPIの見直しを行っています。
環境面では、従来から進めてきたGHG削減の取り組みを、より長期的な時間軸で捉え直しました。中計2025でも2030年度を見据えた目標を掲げていましたが、今回は2050年度を見据えたカーボンニュートラルの方向性を明確にしています。サプライチェーン全体での環境負荷削減を強化すべく、これまでScope1、2を中心に進めてきた取り組みに、Scope3を組み込みました。
人的資本についても、KPIの見直しを行いました。安全に関する指標としては、従来の災害発生率の低減から重篤労働災害ゼロに軸足を移しました。防災訓練やヒヤリハット防止活動など日々の積み重ねが大切であることに変わりはありませんが、単に件数を管理するのではなく、重大な労働災害を起こさない職場をどうつくるかという視点に立ち返ることを意識したものです。
また、企業成長の源泉である人材に関しては、新たにHRウェルビーイング指数を設定しました。これは、従業員の安心・健康、働き方、多様性、成長、やりがいおよび組織風土などの状態を定量的に把握するための指標として、独自に設定したものです。
環境や人的資本に関する取り組みは短期的に結果が見えやすいものではありませんが、ビジョンやミッション、その根底にある経営理念を実現するために不可欠な取り組みと捉え、注力していきます。

この先も、ステークホルダーの皆様から信頼され続ける企業へ
太陽誘電は、1950年の創業から長きにわたり、電子部品の技術革新を通じて安心・安全で快適・便利な社会の基盤を支えてきました。これから100年企業を目指すに当たっても、こうした基本姿勢に変わりはありません。従業員一人ひとりが誇りと好奇心を持って成長し、能力を発揮できる環境づくりを進めることで、人と社会のサステナブル・ウェルビーイングに貢献する企業であり続けたいと思っています。
2026年度は中計2030の初年度です。中計2025では先行投資による供給力の確保や高付加価値領域へのシフトなど、未来への布石を着実に打ってきました。これらの取り組みを土台に、社会課題の解決につながる電子部品やソリューションなど要素技術を生かした新たな価値創造を継続し、すべてのステークホルダーから信頼され、感動を与える企業への進化を実現していきたいと考えています。
ステークホルダーの皆様と対話をしながら更なる成長を目指していきますので、引き続き太陽誘電へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。