財務担当役員メッセージ
高付加価値領域へ注力し、収益力を高めて持続的成長を支える
取締役専務執行役員
経営企画本部担当
福田 智光
2025年度の振り返り収益性回復への土台を築けた一年
2025年度は、AIサーバーや自動車向けの積層セラミックコンデンサ(以下、MLCC)の売上拡大に加え、メモリモジュール向けなどのインダクタも業績改善に寄与し、前年度から増収増益となりました。
改めて2025年度を振り返ると、5カ年にわたる中期経営計画2025(以下、中計2025)の最終年度として、次の成長に向けた準備を進めながら、収益構造の適正化に取り組んだ一年だったと捉えています。
2022年度半ば以降、需要低迷や在庫調整の長期化により厳しい収益環境が続く中で、当社は将来の供給力強化のために先行投資を継続してきましたが、需要の回復が想定よりも遅れたこともあり、固定費負担が重くなっていました。2025年度は、そうした状況を踏まえて投資の抑制と固定費の適正化を進め、一定の成果を出すことができました。
一方で、課題もあります。通信用デバイス事業については、需要低迷が長期化したため2度目となる構造改革を実施し、事業規模を縮小して費用を削減しました。現在、高付加価値領域へのシフトによる事業の再構築に取り組んでいます。
中期経営計画2030高付加価値領域への展開を加速
中期経営計画2030(以下、中計2030)では、高付加価値商品の比率を高めることで、収益性を段階的に改善していくことを成長シナリオの中心に据えています。需要構成の変化に合わせて製品ミックスの転換を進め、数年かけて収益性を高めていく考えです。
一方で、足元ではAI関連需要が当初想定よりも早いペースで高まっており、計画よりも前倒しで成果を示せる好機でもあります。その意味でも、2026年度は中計2030のスタート年度であると同時に、次の成長に向けた体制を整える重要な年と捉えています。開発力を高め、ハイエンドな商品をタイムリーに供給できる体制を整えることが、来年度以降の成長力を左右すると考えています。
中計2030の期間中の設備投資については、MLCC全体で年率10%程度の能力増強を毎年実施する予定でしたが、AIサーバー需要が当社予測を上回っていることを考慮して、2027年度の能力増強を10-15%に引き上げる見通しです。全方位で大きく投資するのではなく、AIサーバー向けなど成長領域におけるボトルネック解消のための投資を中心とし、投資とリターンのバランスを見ながら判断しています。
中計2030では、情報インフラ・産業機器や自動車といった注力市場の売上比率を60%まで高める方針を示していますが、これは特定市場への偏重を意味するものではありません。今後の需要成長が見込まれ、かつ当社の高付加価値戦略とも親和性が高い市場で適切なポジションを取っていけば、結果として比率は60%に達するという考え方です。成長機会を取り込みつつ、投資規律も維持した投資判断が重要だと考えています。

ROIC経営の進展判断軸の明確化で進める選択と集中
当社は中計2025からROIC(投下資本利益率)を軸とした経営管理を導入しました。その最大の成果は、事業を評価する軸が明確になったことです。経営層はもちろん各現場においても、どの事業に資源を配分し、どこで選択と集中を進めるべきか、これまで以上に判断しやすくなりました。通信用デバイスの構造改革や回路モジュールの事業縮小なども、そうした判断軸があったからこそ、速やかに方向性を整理できた面があります。
ROICの要素を収益性と効率性という形に分解すると、引き続き収益性の向上が課題と捉えています。これに対しては、開発力を高め、高付加価値商品の販売増を通じて実現していく方針です。
効率性については現在、事業継続性とのバランスが問われており、BCP対応として一定水準の棚卸資産を保有する必要があります。生産拠点の分散や複数物流ルートの確保など、有事に際しても安定供給を維持するための取り組みは、短期的には効率性を下げる面もあります。しかし、企業として供給責任を果たし続けるためには必要な取り組みであり、売上や利益、ひいては企業価値にもつながるものだと考えています。
こうした認識の下で、ROIC向上に向けては、スループット率と固定費率の両面での管理を強化していきます。高付加価値商品が狙い通り売れているか、固定費は売上規模に見合っているかなどを見える化し、営業利益率を継続的に改善できる構造を実現していきます。
キャピタルアロケーションの方針成長投資、株主還元、健全な財務、3つの要素のバランスを重視
中計2030におけるキャピタルアロケーションでは、成長投資、株主還元、健全な財務の3つのバランスを取ることを重視しています。
当社の企業価値向上には成長投資が必要不可欠ですが、中計2025で先行投資を継続したことで一定の供給力が整備されており、今後は財務の健全性をより強く意識し、投資効率を重視した運営を行っていきます。
中計2030における設備投資の基本方針は、償却の範囲内で高いリターンが見込める高収益分野に絞って行うことにあります。これにより、投資負担を吸収して、フリー・キャッシュ・フローの安定創出につなげていけると考えています。
バランスシートについては、特定の数値目標を置くというより、投資と財務のバランスが取れた状態を維持することを重視しています。需要が弱ければ投資を抑制し、機会があれば投資してリターンを得るというように、市場の変化に対応した柔軟な運営を図ります。こうした方針により、成長機会を逃さないことと、財務基盤を損なわないことの両立を目指します。
投資家の皆様へ持続的な成長に向け、稼げる体質へ
当社の成長性を判断いただくうえで、投資家の皆様にまずご注目いただきたいのは、今後の営業利益率の改善です。あわせて重要なのが、その改善に売上成長が伴っているかどうかです。そのうえで、ROICやフリー・キャッシュ・フローの改善、固定費の適正化の進展などから、当社が持続的に収益を生み出す体質へと転換しているかどうかご注目いただきたいと考えています。
株主還元については、配当の安定性を重視する方針としており、配当性向30%に加えてDOE(株主資本配当率)3.5%を目標指標としています。中長期的にはDOE4.5%を目指す考えですが、これはROE15%を安定的に実現した結果として実現するものと捉えています。まず必要なのは、営業利益率を高め、純利益をしっかり確保できる体質をつくること。稼ぐ力が安定して高まれば、結果としてROEも改善し、DOEの水準も引き上げていけると考えています。
当社が中計2030で進めようとしている変化は、高付加価値商品の売上比率を高めながら、稼ぐ力を着実に回復していくことにあります。短期的な数字だけではなく、持続的に稼げる体質に変わっていく太陽誘電を、中長期の視点で見守っていただけますと幸いです。