特集:MCOIL™(メタル系パワーインダクタ)

  • インダクタに革新の波が訪れている

    インダクタは一般に、コアに電線を巻いた形状をしており、電気回路において使用される基本的な部品です。パワーインダクタ(チョークコイルとも言う)は電源回路で用いられるインダクタで、電圧を安定させる働きをしています。
    スマートフォンやタブレット端末などに代表される小型デジタル機器は、高機能化・多機能化が進むとともに、バッテリーの駆動時間をより長くしたいというユーザーのニーズがますます高まっています。そのため、機器の内部に搭載されるパワーインダクタには、より大電流への対応が求められるとともに、機器の薄型化や回路の省スペース化を実現する小型・薄型化への強い要求もあります。
    このようなニーズに応えるパワーインダクタとして注目されているのが、当社が開発した金属系磁性材料(以下:メタル系材料)で作られる「MCOIL™(エムコイル)」です。これまで主流だったフェライト(酸化鉄を主成分とするセラミックス)を材料とするパワーインダクタと比較して、小型・薄型化しても大電流を流せることがその最大の特長です。メタル系材料を使用したパワーインダクタは、同サイズのフェライト系インダクタに対して、約1.5倍の大電流を流すことができます。

  • 太陽誘電による新開発のメタル系材料
    高強度・高絶縁性・高透磁率という優位性

    当社が開発したメタル系材料の最大の特徴は、従来のメタル系インダクタの材料と異なり、有機系バインダー*1を含んでいない点です。
    太陽誘電のメタル系材料は、金属磁性粒子の表面に結晶性の高く薄い酸化層を形成することで金属磁性粒子間の絶縁と強度を確保しており、有機系バインダーを使用する従来の材料を上回る優れた特性を実現しています。また、当社がこれまでフェライト系インダクタで培ってきた製造プロセスやノウハウの多くを活用することが可能であり、商品品質を高水準で安定させること、さらには開発期間の短縮やコスト低減も可能としました。
    また、新開発のメタル系材料はその透磁率*2においても有機系バインダーを含むメタル系材料と比べて約2倍の透磁率を実現することに成功しました。

    このように、当社が開発したメタル系材料は、高絶縁と高強度が得られると同時に、高い透磁率も得られるという特長を有しています。

    *1 樹脂などでできており、金属磁性粒子同士の結合や絶縁の役割を果たす*2 コアが磁力線を集める力の強さ。コアの透磁率が高いと磁束が強くなり、直流抵抗値を低く抑えられる

    メタル系パワーインダクタ「MCOIL™」に用いられる金属磁性圧粉材料の電子顕微鏡イメージ

  • 「MCOIL™」のさらなる特長
    それは「熱くなりにくい」こと

    「MCOIL™」は、フェライト材料を用いたインダクタよりも優れた直流重畳特性*3を有しています。また、有機系バインダーを用いるメタル系材料よりも高い透磁率を有していることから、巻線を減らして直流抵抗を低減させることができます。

    大きな電流を流すパワーインダクタの場合、通電時の発熱を抑制することも求められることから、発熱源である直流抵抗を低減できることは大きな利点となります。つまり、「熱くなりにくい」というのも「MCOIL™」の大きな特長なのです。発熱によるロスを減らすことは、バッテリー駆動時間をより長くできることにつながり、今日のスマートフォンにとって重要なポイントであることは間違いありません。
    また、有機系バインダーではなく、酸化物との複合材料であることから、高温環境での動作にも優れた材料であり、高温での信頼性がより求められる自動車や産業機器などの分野への応用展開の可能性も有しています。

    *3 コイルにどのくらい直流電流を流せるかを表す

    スマートフォン
    世界生産台数

    タブレット端末
    世界生産台数

  • スマートフォンやタブレット端末だけではない
    拡大が続く「MCOIL™」の今後

    スマートフォンやタブレット端末は今後も出荷台数が伸長することが予想されています。また、さらなる高機能化に伴い、内蔵されるICも増加する傾向にあることから、「MCOIL™」の需要はますます高まることが予想されます。

    搭載される製品が小型化されていく中で、「大電流」「限られたスペース」「発熱の抑制」など、さまざまなニーズに応えるため、「MCOIL™」は2012年の量産開始以来、ラインアップを拡充しています。その中でも小型・薄型化のニーズが強く、さらなる小型・薄型化に対応した商品の開発を進めています。
    さらに、「MCOIL™」はスマートフォンやタブレット端末のみならず、自動車・産業機器・医療機器などの分野にも対応可能な商品です。例えば、自動車向け電子部品に特に必要とされるのが、厳しい温度条件下でも使用できる高い信頼性ですが、有機系バインダーを用いない「MCOIL™」は、耐熱性や温度特性で優位性を発揮すると言えます。
    今後もさまざまな用途にマッチした商品ラインアップを拡充することで、「MCOIL™」の市場拡大を狙っていきます。

    「MCOIL™」のラインアップ

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将来の業績は、経営環境の変化などにより、実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

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パラダイムを
大きく変える商品。
「MCOIL™」はその可能性を
秘めています。

フェライト応用事業部 商品開発部
谷ケ崎 利幸

「MCOIL™」の開発を始めた当時は、メタル系パワーインダクタの一般的なサイズは8~10mm角程度で、主にウルトラブックをはじめとするノートPC向けに使用されていました。その中で、当社は他社との差別化を図るために、デジタルモバイル端末の進化を視野に入れて、より小型化することを目標にしました。
材料選びの段階からなかなかいい材料を見出すことができず、試行錯誤を繰り返しました。その繰り返しの中で、これまでの発想では考えつかないような新しい材料に可能性を見出し、検証を重ねていき有機系バインダーを用いない新しいメタル系材料を開発することに成功しました。
このときほど、エキサイティングな瞬間はありませんでした。世界で一番優れたインダクタを自分の手で生み出していく。その意気込みを持って他社との極めて厳しい競争に臨み、自信を持ってリリースできるNo.1の商品を市場に提供していくこと。高いモチベーションと決してあきらめない太陽誘電の企業文化。これが「MCOIL™」の開発を成功させた原動力であると思います。さらに、これからは「MCOIL™」の特徴を取り入れたさまざまな商品の応用開発を行っていこうと考えています。

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「MCOIL™」の生産拠点

  • 太陽誘電株式会社
    中之条工場

    商品開発から量産までを担当するインダクタ生産のヘッドクォーター。

    所在地:群馬県吾妻郡中之条町
  • 中紀精機株式会社

    世界基準のものづくりを行う最先端工場を目指し、高い生産技術を必要とする難しい商品の生産にも対応。

    所在地:和歌山県日高郡印南町
  • TAIYO YUDEN
    (PHILIPPINES), INC.

    太陽誘電グループにおけるインダクタ量産拠点。2013年より「MCOIL™」の本格的な量産を開始。

    所在地:フィリピン共和国セブ州