社長メッセージ

2013年3月期を振り返って

2013年3月期は、世界経済の持ち直しや円高基調の是正などプラス要素は出てきたものの、電子部品の世界的な需要は低調に推移するなど、引き続き厳しい経営環境となりました。その中で当社グループが5年ぶりに当期純利益の黒字化を達成できたことには、感慨深いものがあります。
しかし、期初の目標であった売上高2,100億円、営業利益100億円、当期純利益55億円を達成することはできず、非常に残念な結果として認識しています。ただ、目標に到達できなかった理由を検証することにより、当社グループにおけるいくつかの課題を発見できたことは、大きな収穫だったと感じています。
「構造改革と成長戦略を着実に進め黒字化は実現したものの、まだ3合目程度の成功であり、次の課題は見えてきた」というのが、私の2013年3月期への率直な評価です。

中期経営計画の進捗について

中期経営計画の初年度目標は達成できなかったものの、企業体質の改善についてはおおむね順調に進んでいると考えています。この体質改善策は、①構造改革の実施、②設備投資の抑制、③その他経費・販管費の削減、④為替感応度の低減、の4つに大別され、多くの目標をクリアすることができました。
中でも構造改革の一策である不採算商品の撤退には、厳しい姿勢で臨みました。私が社長に就任した2011年6月当時、当社グループは利益を創出する商品がある一方で、採算が合わない商品も多く抱えていました。この状況を一刻も早く打破しなければ、利益の出る強い商品で会社を盛り立てていくことが不可能だと判断しました。そこで、これらの不採算商品群を、商品力、コスト力、マーケットの動向・将来性、競合関係など、さまざまな角度から分類し、収益性の改善が可能なものについては黒字化を推進し、それが困難な商品からは撤退することを決定しました。これにより、不採算商品はこの2013年3月末でほぼゼロとなりました。
また、不採算事業に向けられていた人材や資産を注力すべき市場・商品で活用することにより、経営資源を成長分野へシフトしました。「赤字商品は許さない」という姿勢はグループ内でも定着してきており、今後も対策の手を緩めることなく取り組んでいきます。一方で、経営課題として強く認識したのが、需要動向にスピーディに対応するためのマーケティング力です。2013年3月期は、当社グループのマーケティング力が不十分だったために、マーケットの状況にうまく対応することができませんでした。当社グループがビジネスを展開する市場、機器、技術、顧客、モデルごとに、それぞれがどういう状況にあり、今後どうなっていくのか。この情報をいかに早く手に入れて、需要に見合った供給体制を構築していくのか。営業職だけではなく、生産現場も含めて、全社一丸となって、この情報を取りにいく必要があります。そのためには、当社グループがFAE(Field Application Engineer)と呼ぶ技術営業職を増員して体制を強化し、お客様や取引先の皆様とのコミュニケーションを一層密にして、引き続き取り組んでいきます。
これらの施策を着実に推進し、中期経営計画の最終年度である2015年3月期までには、目標を達成したいと考えています。

今後の太陽誘電

太陽誘電グループを取り巻くビジネス環境はめまぐるしく変化しており、そのスピードはますます速くなっていくことでしょう。顧客ニーズをいち早く取り込み、生産体制や開発体制を整えていかなければなりません。技術が強みである当社のような企業が陥りがちな「良い商品は放っておいても売れる」という発想を捨て、顧客ニーズを満たす商品を営業・生産・開発が一体となって分析し、需要予測を立てて体制を整えています。
これからの当社グループを考えるとき、ステークホルダーの皆様からの当社グループへの評価は、社内からの視点では見えない当社グループの等身大の姿として、真摯に受け止めるべきことが多くあると考えます。私はこれまで、さまざまな社外のステークホルダーの方々とお会いし、当社グループに対する評価を伺ってきました。景気変動の影響を受けやすい民生市場を中心とした不安定な「市場基盤」、価格やシェア競争に陥りやすいコモディティ中心の「商品基盤」、業界3番手のサプライヤーとして認識されていた「顧客基盤」、赤字が続いており不安定な「財務基盤」――これらが、私が社長就任時にステークホルダーの皆様を通して知った太陽誘電の姿でした。しかしながら、構造改革を含む体質改善策を進め、中期経営計画に基づく成長戦略を推進して成果が見え始めてきている中で、お客様から少しずつプラスの評価をいただくようになってきたと、実感しています。
「市場基盤」「商品基盤」「顧客基盤」の3つについては、まさに中期経営計画の柱である成長戦略で取り込んでいこうとしている部分です。これまで当社グループが取り組んできた市場だけではなく、自動車や産業機器、ヘルスケア製品、環境エネルギー関連をはじめとする新分野への進出を開始しています。特に、自動車は年々電装化が進み、さまざまな電子部品が使用されています。当社グループでは既に商品ラインアップと販路の拡大に重点的に取り組んでおり、進出への足がかりを掴めているという実感があります。さらに、当社グループだけでは進出が困難だと思われる市場については、他社とのアライアンスなどの手段を活用するビジネスモデルへの変革にも取り組んでいます。これらの市場は価格競争に陥りにくいという性質を持っているため、今後積極的に取り組んでいく予定です。
また、スーパーハイエンド商品への移行をさらに推進し、「太陽誘電ならでは」という商品群の開発を進めることも、有効な手段であると考えています。長期的な当社グループの成長のためにも、さらなる進化系として「Nextハイエンド商品」の創出を狙っています。
このようにして「市場基盤」「商品基盤」の強化を行い、高度な独自の技術に立脚した足腰の強い当社グループを選んでいただける「顧客基盤」の醸成を目指しています。
また、体質改善策については、2013年3月までの1年半で集中的に行ってきましたが、体質改善は企業が継続する限り、永続的に行っていくものです。競争力のある新商品を次々に投入すると同時に、不採算商品へのテコ入れ、あるいは撤退の判断をスピーディに下し、徹底的に収益性重視の企業経営に営業・生産・開発の現場を切り替え、生産性改善やコスト削減のための取り組みを絶えず続けていくつもりです。こうしたことによって、「財務基盤」を強固にしていけると考えています。
このような活動をさらに活発にするために、当社グループは2013年4月に数多くのプロジェクトを立ち上げ、それぞれの課題に取り組んでいます。全社横断型の組織としてフレキシブルに活動することによって、中期経営計画の達成を確かなものにしてまいります。
また、このような改革を行うためには、世界各国の従業員が思う存分その力を発揮できる会社にしていくことも経営者としての任務だと考えています。これからの当社グループは、旺盛なチャレンジスピリッツを発揮する人材に、大いに活躍の場を提供していきたいと考えています。

最後に

当社グループは、「お客様から信頼され、感動を与えるエクセレントカンパニー」を目指し、チャレンジし続けることで、今後大きくその姿を変えていきます。赤字経営から脱却することで、まずステージを変えることに成功しました。次に多くのプロジェクト活動を軸として課題に取り組み、解決することで、さらに変革を進めていきます。当社グループの2014年3月期において、私は、大きなブレイクスルーがあると信じて疑いません。株主をはじめとするステークホルダーの皆様には、これからの当社グループの変革に、ぜひ期待していただきたいと思います。

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