進化するAI社会
近年、急速に普及が進んでいるAI(Artificial Intelligence)。AIとは人工知能のことで、深層学習を使用した大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)によって急速に発展しました。2022年には「ChatGPT」が誕生し、もはや人と会話していると感じられるような自然なやり取りも可能になりつつあります。またAI技術の裏側では、年々高度化する半導体の処理能力に対応するため、最先端の電子部品が求められています。
太陽誘電ではAIに関連した電子部品の開発を進めており、2025年にはAIサーバー向けに世界初※1の静電容量の基板内蔵対応積層セラミックコンデンサ(以下、MLCC)を商品化しました。そんな基板内蔵対応MLCCについて、開発・拡販に携わる技術者3名に話を聞きました。
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※12026年3月当社調べ
今回お話を聞いた技術者
A.H.
営業本部 販売企画室 機器販売企画部 係長
2010年入社。部品内蔵基板の開発部門にて商品設計から量産立ち上げまでを経験。
その後、新事業推進部門を経て現在は技術営業(FAE:Field Application Engineer)としてマーケティング、拡販、技術サポートなどを行う。
Y.M.
第一事業本部 積層コンデンサ事業部 商品開発部
2016年入社。商品開発部に所属し、1005サイズの基板内蔵対応MLCCの開発・量産を担当。
T.K.
第一事業本部 積層コンデンサ事業部 商品開発部
2019年入社。子会社の新潟太陽誘電へ2年間出向し、基板内蔵対応MLCCの量産立ち上げなどを行う。
現在は1608サイズのMLCCの新商品開発を担当。
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※部署名などはいずれも取材当時(2026年2月)のものです。
莫大なデータを扱うAIサーバーと電子部品
A.H.
私たちの身の回りの電子機器は年々取り扱うデータ量が急増しており、今後も指数関数的に増加すると言われています。
現在主流のAIは、「学習(Training)」と「推論(Inference)」の2つのプロセスがあり、深層学習を使った「学習」プロセスは非常に多くのデータを並列して処理できる強力な計算能力が求められます。また「推論」プロセスは学習したデータを活用し、インプットしたデータから推測してアウトプットするものであり、今後の用途は拡大すると言われています。そのような莫大なデータを効率よく処理するためにAIサーバーの需要が拡大しているんです。
AIサーバーには大電流かつ高性能な電源回路が求められるため、いかに電源効率よく性能を上げていくかが重要です。そのため電源供給方法にも変化があり、スペース制約がある中での電子部品の高密度な実装が必要となっています。
基板内蔵対応MLCCを開発した理由
Y.M.
そこで当社は世界初※1の静電容量の基板内蔵対応MLCCを商品化しました。
従来のAIサーバーでは電源回路を並列に配置していましたが半導体の性能向上により、配線の電力ロスが大きくなってしまいます。そこで電源回路を基板の裏側や内側へ配置することで半導体との配線が短くなるため、電気が流れやすく電力ロスを減らすことができます。また内蔵することによって他の部品の搭載スペースを確保することもできるため、MLCCをはじめとした電子部品を基板に内蔵する必要性が高まっています。
当社は2025年にAIサーバー向けに2種類の基板内蔵対応MLCC (1005サイズ22μF、2012サイズ100μF)を商品化し、ラインアップを拡充しています。
T.K.
AIサーバーなどの多層基板の内部配線は銅でできており、基板と接合しやすくするため内蔵する電子部品は銅めっき仕上げにする必要があります。当社の基板内蔵対応MLCCは、めっきや外部電極の厚みが薄く平坦になっているのが特長です。平坦なので基板に内蔵したときに接続しやすく、信頼性の向上にもつながっています。
A.H.
内蔵部品を使った基板は将来的な選択肢の一つであり、様々な技術課題を克服する一手段だと思っています。しかし莫大なデータ量を処理するAIサーバーでは、垂直電源供給により大量の電気を無駄なく効率的に流すことができ、他の部品の搭載スペースも確保できる基板内蔵対応MLCCの必要性が今後より一層高まってくると考えられます。
AIサーバー市場は急速に拡大しており、半導体メーカーやAIプラットフォーマーによる熾烈な技術競争が繰り広げられています。そのため我々は今後の技術変化をしっかりとキャッチし、市場要求にマッチした電子部品の開発を行っていきます。
【次回後編は3月31日公開予定です】